胃弱

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6/25/2025, 12:46:35 PM

 おめでとうございます
 男の子ですよ

 その日、私はお母さんになった
 

 小さい頃から
 厳しい家庭で育った私は
 愛なんてものがよく分からなかった

 大人になっても 
 家の為という理由で
 婚約者が決まっていた

 婚約者の人は
 地元じゃ有名な女たらしで
 私は結婚しても身体だけしか求められなかった

 愛なんて 
 きっとそんなものだと
 そう頭に言い聞かせてきた人生だった

 お腹に子供が出来たと知った日
 その子を下ろしてあげた方が
 家庭の事情に巻き込まれず
 子供にとっては幸せなんじゃないかと思った

 そんなことを考えて過ごしていたある日
 空襲が町を襲った 

 町は燃え
 悲鳴が響く
 大きくなったお腹を
 一人で支えながら逃げ回る

 苦しい
 怖い
 死にたくない

 涙がぽろぽろ溢れ出る
 どうせ死ぬのなら
 一度でいいから
 本物の愛を知りたかった

 誰かが本気で私の事を愛してくれたなら

 
 目が覚めると
 暗い防空壕で座っていた
 外に出る人々を見て
 私も外に出ることにした

 目の前に広がる町は
 以前とは全く違うほどに悲惨なものだった

 建物はほとんど焼き焦げ
 傷だらけの人々が徘徊し
 誰かを呼ぶ声が街に響き渡っていた

 すぐにここがきっと地獄なのだと
 そう思った
 だが、その反面
 自分が今
 自由という道へ進める
 チャンスなのではと思った

 気付くと私は駆け出していた
 どこに行くかも当てもなく

 息を切らして走っていた

 不意に今自分が
 一人ではないということを思い出した

 大きなお腹を擦る
 温かい
 この子もまだ生きたい筈だ
 

 少し経った頃
 私は遠く離れた友人の家で暮らしていた

 そこで
 私は新しい小さな命を産んだ

 小さいのにとても大きい声が
 廊下に鳴り響いていた

 先生が赤子を私の隣にそっと寄せてくれた
 小さいな手で私の指を握った

 その瞬間
 今までずっと感じてきた苦痛が消えた気がした

 涙が止まらない
 こんなにも温かい手で
 誰かに握られたことはあっただろうか

 私は生まれて初めて
 愛を知った気がした

 それはとても小さく
 でも、冷めた心を照らすには
 あまりにも大きい『愛』だった


 あぁ、この子には 
 何があっても
 幸せにしよう

 本物の愛をきっと

 それが、私に出来る恩返しだ

              タイトル:小さな愛
 
 
 
 

2/24/2025, 9:59:12 AM

 空に輝く星は
 ある日突然落ちてきた


 ずっと住んでいた思い出の街
 
 県大会目指して頑張ってた部活動
 学校帰りの友達とのおしゃべり楽しかったな
 ちょっと遅くに帰ってお母さんに怒られたっけ
 
 優しいおばあちゃんがやってた駄菓子屋さん
 いつもおまけしてくれた

 家族でよく行ってたレストラン
 あそこのハンバーグ大好き
 弟は確かオムライスだったかな?

 ここの川原でよく遊んでたな
 小さなサワガニ集めて、それで川に戻した

 …。
 沢山が詰まってた…。
 

 ある日、空から突然
 隕石が降ってきた。
 街の人達が沢山亡くなった。
 思い出の場所も人も一瞬で。

 それはまるで誰かがかけた『魔法』のように
        
                タイトル:魔法
          

11/30/2024, 11:59:21 AM

 そんな風に泣かないでおくれ

 見ているこっちが悲しいじゃないか
 
 君は本当に悪くないよ

 あれは事故だったんだ

 わざわざ、墓参りありがとうな
 君だって忙しいのに

 元気な君を見ると、昔を思い出すよ


 ……?
  
 ま、待って、、
 君の隣にいる人は誰だ?

 見たことある…

 おい、親しげに話すなよ
 
 それに指のそれって…

 嘘だろ、、、○○、。

 だ、駄目だ!

 ○○は、優しくていつも笑顔が素敵で
 それに、あの日だって…

 君は
 僕の為に
 誕生日のサプライズをしてくれて
 ただ、君から貰った新しい帽子が
 風で……!!
 
 思い出したぞ…!
 そいつは、、

 あの時、俺の事を
 轢き殺した癖に
 そのまま逃げてそれで

 僕が幽霊になって彷徨ってた時
 ニュースでまだ捕まってないって…

 あぁ、、ぁぁあ!
 行かないでくれ!頼む!
 お前を巻き込ませる訳には行かないんだ!

          タイトル:泣かないで
 

 

11/27/2024, 12:42:52 AM

 頭がボーとする
 
 家のベットの中
 今にも閉じそうな重い瞼を必死に開ける

 熱でもあるのでは?と思いつつ
 体温を測ろうとは思わなかった。
 授業を休む訳にはいかない。

 皆勤賞ほしいし

 周りから変に思われたくないし

 はぁ
 それにしてもダルい

 どうしようかな
 やっぱ休もうかな…うーん

 でもおかしいな。
 この時間になったら母さんが起こしに来てくれるのに…。
 何かあったのか?

 ……

 行かなきゃ、もしかしたら…
 何かやばいことになってたりして!
 
 熱のせいなのか変な思考が頭を巡る。

 ドタバタと音を立て、階段を降りていく。
 そして思いっきり扉を

 バン!
『母さん!大丈夫!??』

 
 そこには、普通にテレビを観ている母さんの姿があった。
 そして
「今日は土曜日でしょ?何そんなに慌ててるの?」
 
                 タイトル:微熱

10/30/2024, 10:08:46 AM

 あれは何年前の事だっただろうか

 私がまだ学生だった頃
 下校途中で出会った黒髪のイケメン!

 ホントにカッコよかったなぁ…
 かっこいい見た目も優しい喋り方も
 どれもこれも素敵だった。

 その人から喋りかけられた時は
 胸が超ドキドキした!
 

 だから、安易だったんだろうな

 あの時の私はホントにバカだったなぁ
 知らない人に付いていくなって
 小さい頃から教わったのに…

 手とか足とかめっちゃ痛かったなぁ
 涙とかたくさん出たなぁ
 なんで声出せなかったんだろ

 声、
 出せてたらきっと
 今もこうして

 地縛霊としてここにずっと居なくて済んだのに

           タイトル:懐かしく思うこと

 

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