小鳥

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1/12/2024, 10:30:48 AM


僕達がおじいさんとおばあさんになってもさ、
四季の花は欠かさず見に行こうよ。

春は桜を見ながら昔話でもして
のんびりと散歩をするんだ。
満開の桜道はきっとすごくすごく綺麗だよ。
夏はひまわりを見ながらスイカでも食べよう。
空はきっと真っ青でキラキラ輝いている。
秋は金木犀の香りを楽しみながら、手を繋ごう。
そして冬は小さな梅の花を見ながら、
「今年も良い年だった」と二人笑い合いながら、
寄り添い、春の訪れを待つんだ。

良いアイデアだろ?と自信満々に僕が言うと、

じゃあ二人でたくさん長生きしなきゃね、と
彼女は笑顔で僕の手を優しく握りしめた。

その通りだ。
ずっとこのまま、君と四季の花を一緒に見られたら。
これほど幸せな時間はないだろう。


#9 『ずっとこのまま』

1/11/2024, 12:07:12 PM


路上ライブを始めて、もう何年経ったかな。

子供の頃から歌うことが大好きで、
それがいつしか私の歌でみんなを
元気にしたいと思うようになり、
作詞も作曲も全部自分で作るようになった。
時間はずいぶんかかったが、
私の歌を聴いてくれる人も沢山できた。

今日みたいに寒いはあの日のことを思い出す。
私にとって宝物みたいな思い出だ。

──確かあの日も一段と寒い日だった。
まだ私が路上ライブをやり始めた頃。
毎日毎日精一杯歌っていたけど
誰一人聴いてくれなくて、
私の前を沢山の人が通りすぎていった。
寒さで指先も真っ赤になり
体もすっかり冷えきっていて。
もうやめてしまおうか、そう思ったとき
淡く綺麗な着物を着たおばあさんが
パチパチと拍手をしてくれた。
そして私にこう言ったのだ。

「この道を通る度に、素敵な曲だと思っていたの。
毎日元気を貰っていたわ。本当にありがとう。」

ペコリと礼儀正しくお礼を言った後、
「寒いでしょ、良かったらこれで暖まってね。」
と、温かいココアを貰った。
寒さが身に染みていたからこそ、
掛けて貰ったその言葉が心の底から嬉しくて
涙が溢れて止まらなかった。

「こちらこそありがとうございます」
声を振り絞り、精一杯の感謝を込めて
深くお辞儀をした。


うん、もう少し頑張ろう。

聴いてくれてる人がちゃんといる。
応援してくれる人がちゃんといる。

よし、貰ったココアのおかげで指先もじんわりと
暖まってきた。私はまだまだ頑張れそうだ。


──今だから思う。

寒さが身に染みるこの季節だからこそ、
人の暖かさや温もりが強く感じられる。
それはとても愛おしく、そして何かを
一生懸命頑張ってる人の糧にもなるのだ。


今日も私は歌う。
聴いてくれる人へ感謝を込めて。
そして今を頑張ってる人の心に少しでも、
私の歌が届きますようにと願いながら。


#8 『寒さが身に染みて』

1/10/2024, 11:14:22 AM


一回り歳が離れてる兄が二十歳になった。
成人式でビシッとスーツを着こなしている
兄を初めて見たときの印象は
【大人の男の人】だった。

普段の兄は僕と一緒に悪ふざけをしたり、
遊んだり、ゲームをしたりなんかして、
歳の差なんて感じない…むしろ同い年ぐらい
の感覚だと思っていたのだけど、
それは全然違っていた。

兄はやはり立派な【大人】なんだ。

なんだか突然兄が遠い存在になったみたいで、
少し寂しさを感じた。

「兄ちゃんはもう立派な大人なんだね。
僕も早く大人になりたいな。」

そう、ポツリと兄に言った。
すると兄はきょとんとした顔で僕を見た後、
大きな口で笑い、こう言ったのだ。

「俺なんてまだまだ子供だよ。
立派な大人なんかじゃないさ!だから寂しがるな。
二十歳になっても【俺は俺】なんだから!」

そうニッコリ笑った後、わしゃわしゃと
僕の頭を撫でてくれた。
そのときの僕は、兄の言っていることが
いまいちよく分からなかった。

「二十歳になったら大人になるんじゃないの?」
「まぁ、お前にもいつか分かるよ!」


時は流れて、今度は僕が二十歳になった。

「立派な大人になったね」とたくさんの人に
言われたが、なんだかピンとこない。
確かに見た目は立派な大人になったが、
中身は大人かと言われると首を傾げてしまう。
そのとき、ふと兄の言葉を思い出した。

──ああ、そういうことか。


二十歳になっても【僕は僕】なんだ。
ただ年齢が二十歳になっただけで、
それ以外は何一つ変わらない。僕のまま。
そりゃそうだよな。
突然大人になんてなれるはずないのだから。
これから色んなことを経験して、
それからゆっくり大人になっていくのだろう。

僕はこれから大人になっていくんだ。
そう思ったら、なんだかストンっと
肩の荷が下りた感じがした。

それと同時に無性に兄に会いたくなった。
そうだ。近いうち兄と二人で酒でも飲みに行こう。



#7 『20歳』

1/9/2024, 11:16:20 AM


「はぁ…」

小さくため息をついて夜道を歩く。
今日は残業もしたからか体が疲れきっていて、
頭の中もネガティブなことばかり考えてしまう。
なんてツイてない日なんだろう。
それにいつもより遅いこの時間帯は、
シンと静まり返っている。

自然と頭の中はもやもやと後ろ向きなことばかり
考えてしまう。ああもうどうしたものか!と
勢いよく上を向いたとき、満天の星空の中に
三日月を見つけた。そういえば、ここ最近
ずっと正面ばかり見ていて空を見上げていなかった。
そのとき、ふと思い出したことがあった。

【三日月にお祈りすると願いが叶う】

そんなわけないよなぁなんて思いながら、
何となく軽い気持ちで、こう願ってみた。

「コンビニに俺がずっと食べたかった
期間限定のプリンがありますように。」

まだ一度も買えたことがない伝説のプリン。
まぁ、あるわけないよな。なんて思いながら
近くのコンビニに寄ってみたら、

「あった。」

心臓がドキリと跳ねたと同時に、
テンションが上がる。
すぐにプリンとノンアルコールのチューハイを
購入した。願いが叶ったことが無性に嬉しくて、
先程の落ち込んだ気分が吹っ飛んだほどだ。

あれ?俺って意外と単純なんだなぁと思ったら、
なんだか面白くて。
それと同時に気持ちが軽くなった。

軽い足取りでそのまま夜の公園に向かった。
ベンチに座り、ネクタイを緩めて、
セットしていた髪の毛をくしゃっと崩す。

念願のプリンをぱくりと食べて、また空を見上げる。
先程と変わらず空にはキラキラと満天の星空が。
そして一際輝いている三日月に感謝を込めて、
この美しい夜の時間を満喫したのだ。



#6 『三日月』

1/8/2024, 11:23:07 AM


人生というキャンバスに
あなただけの色をたくさん
のせて下さい。

間違えても大丈夫。
キャンバスは何度だって修正出来ます。


あなただけの色とりどりのキャンバスは
唯一無二、美しいのです。


#5 『色とりどり』

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