小鳥

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「はぁ…」

小さくため息をついて夜道を歩く。
今日は残業もしたからか体が疲れきっていて、
頭の中もネガティブなことばかり考えてしまう。
なんてツイてない日なんだろう。
それにいつもより遅いこの時間帯は、
シンと静まり返っている。

自然と頭の中はもやもやと後ろ向きなことばかり
考えてしまう。ああもうどうしたものか!と
勢いよく上を向いたとき、満天の星空の中に
三日月を見つけた。そういえば、ここ最近
ずっと正面ばかり見ていて空を見上げていなかった。
そのとき、ふと思い出したことがあった。

【三日月にお祈りすると願いが叶う】

そんなわけないよなぁなんて思いながら、
何となく軽い気持ちで、こう願ってみた。

「コンビニに俺がずっと食べたかった
期間限定のプリンがありますように。」

まだ一度も買えたことがない伝説のプリン。
まぁ、あるわけないよな。なんて思いながら
近くのコンビニに寄ってみたら、

「あった。」

心臓がドキリと跳ねたと同時に、
テンションが上がる。
すぐにプリンとノンアルコールのチューハイを
購入した。願いが叶ったことが無性に嬉しくて、
先程の落ち込んだ気分が吹っ飛んだほどだ。

あれ?俺って意外と単純なんだなぁと思ったら、
なんだか面白くて。
それと同時に気持ちが軽くなった。

軽い足取りでそのまま夜の公園に向かった。
ベンチに座り、ネクタイを緩めて、
セットしていた髪の毛をくしゃっと崩す。

念願のプリンをぱくりと食べて、また空を見上げる。
先程と変わらず空にはキラキラと満天の星空が。
そして一際輝いている三日月に感謝を込めて、
この美しい夜の時間を満喫したのだ。



#6 『三日月』

1/9/2024, 11:16:20 AM