小鳥

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一回り歳が離れてる兄が二十歳になった。
成人式でビシッとスーツを着こなしている
兄を初めて見たときの印象は
【大人の男の人】だった。

普段の兄は僕と一緒に悪ふざけをしたり、
遊んだり、ゲームをしたりなんかして、
歳の差なんて感じない…むしろ同い年ぐらい
の感覚だと思っていたのだけど、
それは全然違っていた。

兄はやはり立派な【大人】なんだ。

なんだか突然兄が遠い存在になったみたいで、
少し寂しさを感じた。

「兄ちゃんはもう立派な大人なんだね。
僕も早く大人になりたいな。」

そう、ポツリと兄に言った。
すると兄はきょとんとした顔で僕を見た後、
大きな口で笑い、こう言ったのだ。

「俺なんてまだまだ子供だよ。
立派な大人なんかじゃないさ!だから寂しがるな。
二十歳になっても【俺は俺】なんだから!」

そうニッコリ笑った後、わしゃわしゃと
僕の頭を撫でてくれた。
そのときの僕は、兄の言っていることが
いまいちよく分からなかった。

「二十歳になったら大人になるんじゃないの?」
「まぁ、お前にもいつか分かるよ!」


時は流れて、今度は僕が二十歳になった。

「立派な大人になったね」とたくさんの人に
言われたが、なんだかピンとこない。
確かに見た目は立派な大人になったが、
中身は大人かと言われると首を傾げてしまう。
そのとき、ふと兄の言葉を思い出した。

──ああ、そういうことか。


二十歳になっても【僕は僕】なんだ。
ただ年齢が二十歳になっただけで、
それ以外は何一つ変わらない。僕のまま。
そりゃそうだよな。
突然大人になんてなれるはずないのだから。
これから色んなことを経験して、
それからゆっくり大人になっていくのだろう。

僕はこれから大人になっていくんだ。
そう思ったら、なんだかストンっと
肩の荷が下りた感じがした。

それと同時に無性に兄に会いたくなった。
そうだ。近いうち兄と二人で酒でも飲みに行こう。



#7 『20歳』

1/10/2024, 11:14:22 AM