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3/16/2023, 4:21:05 PM

僕は酷く怖がりだ
そして臆病者でもある
あれやこれやと未来の事を想像しては
勝手に自身の作り出したその影に
潰され怯えてしまう事も少なくない


先日会社から『仕事を辞めるなら先にしてくれ』と
言われてしまい僕はかなり面食らった
会社側の言い分は素直に受け入れ難いもので
その上前もって辞める意向は伝えていたので
あまりのままならなさにガックリきてしまったのだ

正直今の仕事は今すぐにでも辞めたいほど苦痛で
とうとう体調に異変が出てしまった
会社に行かなくてはいけないのに身体が動かない、
というのは恐ろしい事だと身をもって知った
このまま君と生活する事も有耶無耶になってしまう様な
漠然とした不安が常に頭を埋めてしまっていた

そんな僕の内情を知ってか
君は今日開口一番に「どうしたら笑ってくれる?」と
僕に尋ねてきた
そうして僕が先の事情を話すと共感した後に
これから先の未来の話をし始めた
良い物件を見つけたよ、家具はどうしようか
そうして何度も「なんとかなるよ」と笑って言った

僕は本当に自分が愚かだと思った
今を見つめられない自分を
未来に期待できない自分を
そして同時に不思議に思った
どうしてここまで正反対な僕らを
神は巡り合わせたのだろうかと
そしてありきたりではあるが
僕は本当に怖がりで臆病なので
君と離れてしまうことが時々酷く不安になるのだ
こればっかりは「なんとかなるよ」では
片はつけられそうにないけれど
今日は久しぶりによく眠れる様な気がする

3/5/2023, 4:14:01 PM

たまに僕は最小限の荷物と
カメラ一つを持って
自分が住んでいる街を
心のままに探索してみる

そうしていると
もううんざりするほど知っている、
と思っていたこの街にも
まだまだ知らない場所があって
確かに人の営みが存在していて
この目にまるで知らない街のように映るのだ


寺島修司の「家出のすすめ」という本の中で
持たずに持つこと、という節がある
これによれば「おもうときに使用しても、文句をいわれない」ものを自分の所有物とした時、
自分の持っている小説やシャツやCD、だけではなく
自分の住んでいる街や探訪した街も同じく所有していると言えるのではないか、というのだ
そして「どれだけ多くのものを『持つ』ことができるかによってその人の詩人としての天性がきまるのであり、
新しい価値を生み出せるのだ」と説いている
少々強引ともとれる内容だが、僕はひどく共感した

たまにはこの路地を見過ごして次の路地へ
それだけでも案外新しい発見があるかもしれない

3/2/2023, 3:29:26 PM

僕には昔、過去の嫌な出来事や
自分の境遇を他人と比べて
目に映るもの全てに恐怖し流れる血を疑い
疑心暗鬼した時期があった

僕は心の底の泥濘に足を絡め取られるような
陰鬱でどうしようもない気分の時は
きまって一つの曲を繰り返し垂れ流すのだが
この時に流していたのは
キタニタツヤのデマゴーグという曲だった

「苦しみ全てを抱えて生きる、あなたへの祈りを!」

この曲は希望を謳った曲、ではなく
逃げられない苦しみに寄り添うような曲だった
当時の僕はその温度が心地よく
少しずつ心が解けていくような感覚を覚えた
真っ暗な部屋を満たすその曲だけが
僕の小さな希望だった


希望について改めて考えた時
そんなに仰々しいものなのだろうか、と思う
偶々出会ったこの曲のように
案外どこにでも転がり落ちているのではないかと
今はそう思える
そしてそれを取りこぼしてしまわぬように
きっかけを逃してしまわぬように
やり場のない苦しみを抱えたまま
生きていきたいと願う

2/28/2023, 2:09:57 PM

昨年、僕は一大決心をした
それはすなわち今持っている全てを捨てて
君のところへ行く、という事だ
仕事も家も、同時に家族も置き去りにして
僕は遠くの街へ行くと決めた


決心するまで、僕は相当な時間を費やした
もっと短絡的に、衝動的であったらいいのにと
自分の性格を恨んだこともあったし
この話を持ち出した君の事も
時折どうしてと詰ったことすらあった
悩み果てて疲れた夜も幾度もあった
母親には口をきいてもらえなくなり
職場の人間にも猛反対され
諦めてしまえばどれほど楽だろうかと苦悶した

それでも僕を突き動かしたのは
現状が続く恐ろしさだった
家に帰ると家族が迎えてくれるし
仕事もうんざりするほど安定している
側からみれば幸せの典型のような生活が
僕は怖かった
この街で この場所で 何も知らないままに
年老いていく事を想像したくは無かった
誰かに若いと嘲笑されようとも
ここで君の手をとらなければ
僕はもう二度と僕を愛せないと思った
そして何より君と生活する以上の価値など
この世界にはありはしないと思ってしまった
一度決めたらこんなものか、と思った
初めて自分の人生が
自分の手の内に入ったような気がした


僕はもうすぐ遠くの街へ行く
何も持たないまま、着の身着のままで
君の住む街へ向かうのだ

2/27/2023, 2:57:36 PM

僕は絵を描くのが好きだ
真白なキャンバスから線を引き色を乗せ
一つの絵が出来ればそれなりに満足する

しかしそれも束の間
上手くならなければという焦燥感が
常に頭を埋めてしまって
練習しなければ、とまた慌てて筆をとる
向上心があると言えば聞こえはいいが
がむしゃらに到達点もないまま描き続けるのは
ひどく不安で仕方がない

そして最近ふと思う
この焦りは一体何なのだろうと
自分のしているこれは
ただの現実逃避なのだろうかと
それともこれが現実になったら
どれほど充足できるのだろうかと
僕はまた妄想に耽り
現実逃避をしてしまう

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