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昨年、僕は一大決心をした
それはすなわち今持っている全てを捨てて
君のところへ行く、という事だ
仕事も家も、同時に家族も置き去りにして
僕は遠くの街へ行くと決めた


決心するまで、僕は相当な時間を費やした
もっと短絡的に、衝動的であったらいいのにと
自分の性格を恨んだこともあったし
この話を持ち出した君の事も
時折どうしてと詰ったことすらあった
悩み果てて疲れた夜も幾度もあった
母親には口をきいてもらえなくなり
職場の人間にも猛反対され
諦めてしまえばどれほど楽だろうかと苦悶した

それでも僕を突き動かしたのは
現状が続く恐ろしさだった
家に帰ると家族が迎えてくれるし
仕事もうんざりするほど安定している
側からみれば幸せの典型のような生活が
僕は怖かった
この街で この場所で 何も知らないままに
年老いていく事を想像したくは無かった
誰かに若いと嘲笑されようとも
ここで君の手をとらなければ
僕はもう二度と僕を愛せないと思った
そして何より君と生活する以上の価値など
この世界にはありはしないと思ってしまった
一度決めたらこんなものか、と思った
初めて自分の人生が
自分の手の内に入ったような気がした


僕はもうすぐ遠くの街へ行く
何も持たないまま、着の身着のままで
君の住む街へ向かうのだ

2/28/2023, 2:09:57 PM