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僕には昔、過去の嫌な出来事や
自分の境遇を他人と比べて
目に映るもの全てに恐怖し流れる血を疑い
疑心暗鬼した時期があった

僕は心の底の泥濘に足を絡め取られるような
陰鬱でどうしようもない気分の時は
きまって一つの曲を繰り返し垂れ流すのだが
この時に流していたのは
キタニタツヤのデマゴーグという曲だった

「苦しみ全てを抱えて生きる、あなたへの祈りを!」

この曲は希望を謳った曲、ではなく
逃げられない苦しみに寄り添うような曲だった
当時の僕はその温度が心地よく
少しずつ心が解けていくような感覚を覚えた
真っ暗な部屋を満たすその曲だけが
僕の小さな希望だった


希望について改めて考えた時
そんなに仰々しいものなのだろうか、と思う
偶々出会ったこの曲のように
案外どこにでも転がり落ちているのではないかと
今はそう思える
そしてそれを取りこぼしてしまわぬように
きっかけを逃してしまわぬように
やり場のない苦しみを抱えたまま
生きていきたいと願う

3/2/2023, 3:29:26 PM