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2/14/2023, 11:09:31 AM

数日前、職場の後輩が
バレンタインについて言及していた
どさくさに紛れて僕に「ブラウニーが欲しい」
と強請っていたのを覚えていた
昨日きちんと店で仕込んで今日渡すと
花が咲いたような笑顔を見せてくれた

僕はその子の他にも職場の女の子に
昨日仕込んだチョコを渡した
チョコを渡すと先の後輩同様に
皆嬉しそうな笑顔を見せてくれた
僕も鏡みたいに笑ってみた



いつかのバレンタインの記憶をふと思い出した
君の家でチョコレートケーキを作ろうと計画して
僕たちは各々の家から分担した材料を持ち寄って
意気揚々と作成にとりかかった

しかし出来上がったのは厚さ1センチの
真っ黒なスポンジケーキだった
おそらく僕が入れたココアパウダーが
多いのが原因だった
なんとか見た目だけは誤魔化そうと
2人でチョコレート味の生クリームを出鱈目に搾ったり
カラフルな色のチョコレートを乗せてはみたけど
味や食感は誤魔化せるはずもなく
ボソボソとした謎の甘ったるい物体を
不味い不味いと笑いながら
向かい合って紅茶で流し込んだ


なぜ今このこの記憶を思い出したのか
考えれば答えは簡単に思いつく
君に渡せないのが寂しいからだ
本当は君に渡したかった
今日皆に渡した分全て

2/13/2023, 11:07:21 AM

『今日は少し遅くなるよ』
暫くして飛んでくるお疲れ様のスタンプ
このリズムが僕は心地いい

いつの間にか習慣になった君との通話も
今ではもう無くては寂しくなってしまった
繋いだ瞬間けたたましく鳴る機械音に
僕はギョッと驚く。訊かずにはいられない。
「何の音?」
「ミキサーの音」
「なんで?」
「いちごミルクが飲みたくなって作ってた」
僕は笑う。君の奔放さを愛しく思う。
「美味しい?」
「うんま!」
「良かったねぇ」
君は笑う。
ああ、この感じだと思う。
この空気がたまらなく僕を安心させるのだ。


今日は早めに終わったから
いつもの時間に待ってて

2/12/2023, 10:45:39 AM

君がひとりでに歌う知らない歌の鼻歌を
独り占めしている時の
この微睡むような甘やかな感情を
僕は上手く言葉にできない

君が僕のために怒って
それでも一緒に居ようと言った時の
この泣きそうなどうしようもない感情を
僕は上手く言葉にできない

君に伝えるべき言葉を探して
手当たり次第に本を読んだり
遠い国の映画を観たり
辞書を捲ってはみたけれど
未だにそれは見つけられくて
僕は戸惑っている
こんな内情を知らずに君は
また僕に笑うのだ
世界のすべての意味を持って

2/11/2023, 5:44:25 PM

盛夏の学校帰り
暑い暑いと文句を言いながら
体操着の半ズボンを仕込んでいるのをいい事に
人目も気にせずスカートを煽ったよね
帰路の途中にある神社を気まぐれに参拝したり
背丈よりずっと高い向日葵が咲いているのを
見つけては2人で見入ったよね

真冬の学校帰り
息が白くなると君ははしゃいで
空に息を吐いては僕に見せたがって
隣で寒い寒いと震える僕に
手を差し伸べてはこっそり繋いで
あったかいねと笑ったよね


この場所から君は居なくなってしまって
僕はこの場所で生きていくと思っていたけど
ふとした瞬間に君の笑い声やポニーテールの先が
ありありと浮かんでくるから
それは酷く困難で
僕はこの場所で生きるのを諦めた

1/21/2023, 12:08:50 PM

サンタクロースを待ち侘びて中々眠れなかった夜
従姉妹が集まり特別に夜更かしが許された盆の夜
幼い頃はそんな夜こそが
『特別』と呼ぶに相応しいと思っていた

けれど
当たり前のように君と毎日
今日あった面白い事や嫌だった事を
丁寧に切り分けては口に運んで
感想を言い合うような温い(ぬるい)夜も
同じように『特別』と呼ぶに相応しいと
今の僕は知っている

いつか終わるこの夜が
少しでも長く続きますようにと
幼い頃と同じ願いを
密かに胸に抱き続けたまま
僕は君と笑っていたい

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