Open App

数日前、職場の後輩が
バレンタインについて言及していた
どさくさに紛れて僕に「ブラウニーが欲しい」
と強請っていたのを覚えていた
昨日きちんと店で仕込んで今日渡すと
花が咲いたような笑顔を見せてくれた

僕はその子の他にも職場の女の子に
昨日仕込んだチョコを渡した
チョコを渡すと先の後輩同様に
皆嬉しそうな笑顔を見せてくれた
僕も鏡みたいに笑ってみた



いつかのバレンタインの記憶をふと思い出した
君の家でチョコレートケーキを作ろうと計画して
僕たちは各々の家から分担した材料を持ち寄って
意気揚々と作成にとりかかった

しかし出来上がったのは厚さ1センチの
真っ黒なスポンジケーキだった
おそらく僕が入れたココアパウダーが
多いのが原因だった
なんとか見た目だけは誤魔化そうと
2人でチョコレート味の生クリームを出鱈目に搾ったり
カラフルな色のチョコレートを乗せてはみたけど
味や食感は誤魔化せるはずもなく
ボソボソとした謎の甘ったるい物体を
不味い不味いと笑いながら
向かい合って紅茶で流し込んだ


なぜ今このこの記憶を思い出したのか
考えれば答えは簡単に思いつく
君に渡せないのが寂しいからだ
本当は君に渡したかった
今日皆に渡した分全て

2/14/2023, 11:09:31 AM