NoName

Open App
5/16/2025, 1:37:53 PM

「なんで、なんで?」
目の前には、血だらけで、息も途絶えそうな×××の姿がある。可笑しい、そんなに難しい任務じゃなかった。
今までと比べたら、正直簡単な方でさえある。
それなのに、今彼は、自分の目の前で苦しんでいた。
「…いまっ、運ぶから」
地面に染み込んでいく血を見ながら、布を取り出して1番傷の深いお腹に巻き付ける。
いくら総統だからって、緊急処置くらいは身につけてる。
でも、傷はかなり深くて、血が止まらない。
急いで城に戻るために、×××を担ごうとした。
それなのに、出した手は防がれてしまった。

「…まって、」
「×××!?話せるの?どこが痛いの大丈夫なの!?」
うっすらと目を開けて、少し微笑んで見せる彼の顔は、いつもの笑顔じゃなくて、激痛に歪んでいた。
「今、城に運ぶからね、!大丈夫、治るよ」
頭を優しく撫でてやると、×××は首を振った。
「も、むり…だよ。そもそも、お、れのこと担げないくせに」
「そんなのやってみないとわかんないじゃん!」
「わかるよ、体のおおきさ、からちがうでしょ、?」
震える手を、俺の手にかぶせる。
ぽんぽんと、安心させるような手つき。
あぁ、やめて。
やめてよ。
「ごめん…」
「…なんにも、わるくない…。誰も、わるくない」
「ごめんね」
「わらってよ、どうせならさ」
「…っふ、これでいいの?」
「…あは、かんぺき」
そのままふたりで、笑いが収まるまで手を握り合っていた。

手放す勇気



この物語はノンフィクションです。

5/16/2025, 5:17:08 AM

美しくて、輝くキミ。

すぐにでも、自分のモノにしたかった。

周りの奴らは、アイツは可笑しい、と言っていたけど俺はキミのことをいつも考えてる。

ターコイズブルーの瞳を片目を隠すその茶髪は、いつもゆらゆらと揺らして俺の目を離さない。

奴らは可笑しい。こんなに綺麗でカワイイキミを、そんなに言うなんて。

今日もまた、その白衣から垣間見える包帯は俺の心を抉りつける。

暗闇の中で輝くキミは、俺のタカラモノ。

5/14/2025, 11:01:37 AM

「はひゅ、ひゅっ…」
自分の手で包まれる、お前の首。
苦しそうに顔を歪ませて、少しでもの抵抗を示しているその腕が、自分の手に巻きつけられている。
「苦しいの?」
そう問うと、首をどうにかして上下させながら、くるしい、と必死に言おうとしているのが目に見えた。
「なんで、苦しいのか分かる?」
なるべく優しい声で、正解に辿り着かせてあげる。
「、さ、さん、そ、ひゅっ…」
「うん、そうだね。えらい」
正解したなら、ご褒美をやらなくちゃ。
手を、離してあげた。
すると、お前は必死に息を吸い込んで、首に手を当てて苦しんでた。
「気をつけようね。」
頭を撫でてやると、満足したかのように、うん。と答えた。

5/13/2025, 11:40:12 AM

「、しょっぱ…」
起きたら知らないところにいたので、とりあえず腹を満たすために海水を舐めた。海水舐めるなんてなんでバカなこと、馬鹿しかしないんだろうけど、こんな一面まっさらで綺麗な海があるとこ、初めてだし。こんな世界現実にないし。どうせファンタジーワールドとかそんなもんでしょ?それか夢とか。だから、大丈夫。俺が馬鹿じゃないとだけ、言っておいてあげる。

ま、海水は海水だからしょっぱかった。
当然だけどネ。
5歳くらいの小さい時に、一回海水を舐めたことがあるんだけど、そのときとは少し違った。しょっぱいんだけど、あの時の味じゃなかった。なんか、不思議なキモチになれる味だった。変な味。直接感想を言うと、そんな感じね。あの時はコテンパンに怒られたなぁ。進んで舐めるもんじゃねえって、言われたっけね?

そこからちょっと海に沿って歩いてみたんだけど、なーんにもないし、上見たってあるのは空じゃなくて一面の白。なんの変化もない、海の音だけが響くこの世界はなんともつまらない。世界は変化があるから面白いのに。なんもなかったら、それはただの絵みたいなもんでしょ?そう思わない?

まあ、余談もそこそこに、俺実は困ってるんだよね。この世界での時の進み方がわからないから、ここにきてからどれくらい経ったのかわからないんだよね〜。流石にこれから海水だけで生きてけってのも、なんとも鬼畜な話だし。美味しいもの食べたいもんね。あ、ショートケーキ食べたいなあ。

ちょくちょく、さっきから海水舐めてるんだけど、すごい変な感じになるの。味が、とかじゃなくて、普通に頭が。
ぐわんぐわんってよりかは、ふわふわ?って感じ。
なんか、なんも考えられない感じがするの。
これってなんでなんだろうね?治るのかな。今熱出たとか、やめてよね、冗談でもきついんだけど?

なんか頭のふわふわのせいで、上手く歩けなくなってきたんだよね。足もおぼつかないしさ、視界がぐらぐらして、歩きづらい。

あ、転んだ。そんなこと考えてたら、転んじゃったじゃん。
でも、痛くない。そういえば、昔も転んでも何も痛くないときがあって…。

…?あれ、なんだったっけ。

もう手足も動かせない。寝てるだけ。この世界は現実じゃないんだから、起きたらどうせベットの上か、なんかでしょ?
まあ、いいや。なんとかなるよね、おやすみ。




「…ここ、どこ?」




5/12/2025, 12:31:04 PM

注意


















「ね、×××は俺から離れてったりしないよね?」
痩せこけた細い手のはずなのに、握りしめる力は信じられないほどに強い。大きな目のさらに奥の何かが、自分を捉えている。
「当たり前でしょ。離れてくわけないだろ?」
実験中だったフラスコを机上において、空いている左手でその握りしめてくる手を優しくさすってやる。すると、安心したのか、ゆっくりと手を離した。
「だよね、よかった。もう、俺アンタしかいないんだ。捨てないで、おねがいだから…」
顔を伏せ、震え始める睫毛を見つめる。いつもはきらきらしているそのターコイズブルーの瞳が、不安で揺れている。
今にでも目から溢れそうなその粒を指で拭ってあげる。
「もう、心配性だなぁ。泣かなくても大丈夫だよ」
俺に堕ちて、そのまま。君には俺さえいればいいんだよ。

「当たり前でしょ。離れてくわけないだろ?」
ふわふわの金髪を揺らして微笑んでこっちを向いてくれる。
とっても優しい、俺だけのヒーロー。
俺が周りから遠ざけられていた時に、声をかけてくれた。
そこから、ふたりで研究室を造り上げて、ずっと一緒。
「だよね、よかった。もう、俺アンタしかいないんだ。捨てないで、おねがいだから…」
嗚咽を我慢して、そう告げる。上向いたら溢れちゃいそうだから、下向いて、顔を見ないようにした。
そしたら、さっきまでフラスコを握ってた左手で、俺の目元に滲むものを拭い取ってくれる。
「もう、心配性だなぁ。泣かなくても大丈夫だよ」
俺だけに見せてくれる笑顔。アンタだけに見せる俺のキモチ。ぜんぶ、アンタだけのモノ。
アンタさえいればいい。ただ、アンタだけ。

Next