「なんで、なんで?」
目の前には、血だらけで、息も途絶えそうな×××の姿がある。可笑しい、そんなに難しい任務じゃなかった。
今までと比べたら、正直簡単な方でさえある。
それなのに、今彼は、自分の目の前で苦しんでいた。
「…いまっ、運ぶから」
地面に染み込んでいく血を見ながら、布を取り出して1番傷の深いお腹に巻き付ける。
いくら総統だからって、緊急処置くらいは身につけてる。
でも、傷はかなり深くて、血が止まらない。
急いで城に戻るために、×××を担ごうとした。
それなのに、出した手は防がれてしまった。
「…まって、」
「×××!?話せるの?どこが痛いの大丈夫なの!?」
うっすらと目を開けて、少し微笑んで見せる彼の顔は、いつもの笑顔じゃなくて、激痛に歪んでいた。
「今、城に運ぶからね、!大丈夫、治るよ」
頭を優しく撫でてやると、×××は首を振った。
「も、むり…だよ。そもそも、お、れのこと担げないくせに」
「そんなのやってみないとわかんないじゃん!」
「わかるよ、体のおおきさ、からちがうでしょ、?」
震える手を、俺の手にかぶせる。
ぽんぽんと、安心させるような手つき。
あぁ、やめて。
やめてよ。
「ごめん…」
「…なんにも、わるくない…。誰も、わるくない」
「ごめんね」
「わらってよ、どうせならさ」
「…っふ、これでいいの?」
「…あは、かんぺき」
そのままふたりで、笑いが収まるまで手を握り合っていた。
手放す勇気
この物語はノンフィクションです。
5/16/2025, 1:37:53 PM