NoName

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3/28/2025, 11:05:19 AM

「ねえ、本当に気をつけてよ」
「ごめんって〜」
バツが悪そうにして、こいつは言い逃れをしようとする気だろうが、今回ばかりは逃さない。
「いっつもそう言ってるじゃん、それなのにケガして帰ってきてさあ」
「わざとじゃないんだってば!許してよお」
「…毎回わざとじゃないっていってるけど、それにしては頻度が高くない?」
「そうかな」
「…何か、隠してるんじゃないの」
目を鋭くしてそういうと、こいつは一瞬固まったように見えた。
「もー!そんなわけないじゃん、なんでそう思うの」
「別に、何もないならそれでいいよ」
「ほんとに、何もないんだってば」
これは、嘘だ。何かを隠してる。
「…次怪我してきたら、俺、お前と関わり切るから」
「……えっ」
半分冗談、残り半分脅しで言ってやるとこいつはその大きな目をぱちぱちと瞬かせて、信じられないというふうな顔をした。
「なーんて、冗談だ」
「ちょっと待って、!?それ、本気で言ってるの!?」
勢いよく肩を掴まれて、揺さぶられる。
「いやだから、冗談だって」
「…は、ほんとに?」
「ほんとだよ」
頭を優しく撫でてやると、こいつはやっと安堵したような表情をした。
「よかったあっ…」
「でも、これからもケガをしてきたら本気で切るかもしれないよ?」
ニヤつきながらそう言うと、泣きそうな顔をしたので焦って訂正をする。
「ちょっと、なんで泣きそうなの笑、縁は切らないけど、ケガしないようにしろよってこと」
「泣きそうじゃないもん、ないてるんだもん」
「泣いてんのかよ笑」
「…じつはね、こうやっていつも怒るとき、ちょっと怖いけど、この感じ俺好きなんだ」
「はー?」
「なんか、幸せーって感じ!」
俺はいつもハラハラしているって言うのに、こいつってやつは…。
「こっちは心配してるんだよ、余計な心配かけせないの!」
と、こいつの頭にゲンコツをおとす。
「いてっ!!…へへ」
「…はあ、仕方ないな」
「なに?」
「甘いもん、食べに行く?」
その瞬間、こいつはふんわりと笑ってキラキラした目を向けた。
「やった!やっぱり俺幸せ!」
「…はは」
まあ、ケガしてくんのはやめてほしいけど、このやりとりは俺も嫌いじゃない。

3/28/2025, 6:59:40 AM

「ねえねえ」
「なに」
「まだ雪があるねえ!」
「そうだね」
「でも東京とかでは桜が咲いているところもあるんだって」
「ふーん、そうなんだ」
「此処ではまだ冬なのにね」
「まだ寒いね」
「ね!さむいよね」
「ほら、はやく勉強しようよ」
「もー!いつも勉強勉強ってさあ」
「しょうがないだろ、勉強しないと」
「むー、…!じゃあさ、まだ雪あるから勉強終わったらそこでお雪見しようよ!」
「はあ?お雪見ってなんだよ」
「お花見の冬バージョン!どう、俺ネーミングセンス天才じゃない?」
「そーかな」
「そうなの!じゃあ、はやく勉強しようぜ」
「…こら、数学から逃げるな」
「だって!数学嫌なんだもん」
「やらなきゃいけないんだから、今やっておくんだよ」
「めんどくさい!」
「…あーあ、いいのかなあ、こんな調子じゃお雪見できないなあ」
「えっ!?」
「数学大変だもんなあ、まあ仕方ないか」
「まって!それは話が違うじゃん!」
「?違くないだろ」
「…もー!!わかったよ、数学やるよ」
「良かった、はやくテキスト開け」
「仕方ないなあ、アナタサマのためにやってやるよ!」
「はいはい」

3/26/2025, 1:07:54 PM

「きれい…」
おれの目の前には、黄色.青色.紫色.白色.赤色.緑色の宝石がはめられていた。手に取ってみると、ひとつひとつ輝きが違う。光の当たり具合によって、色々変わる優れものらしい。
「ん?」
よく見ていると、白色と赤色の間にもうひとつはめられるところがあった。
「なんで、ここ空いて」
不思議に思いつつも、今は少しのことでも頭を使いたくないので、まあいいか、と諦めてポケットに手を突っ込んだ。
すると、突っ込んだ右手に違和感を感じたから、違和感の元凶とともに手をだした。
「え、これ」
そこには、水色の宝石。
「なんでこんなところに?こんなの見覚えないのに」
よく見てみると、これだけが、異様に輝いていた。
「ま?はめてみますか」
結局ノリではめた。
その瞬間、他の宝石とともに、水色の宝石が更なる光を発した。
「…きれい…!」
こんなに美しいものは見たことがない、持って帰りたい、!

気がつくと、おれはその七つの光を発する宝石たちを待って、ベットに横たわっていた。


3/26/2025, 12:40:49 AM

「誰」
「覚えてないのか」
「うん」
「体調は?どこか痛いところはないか?」
「何もないよ、ところで君は誰なの」
「同い年だよ。俺は、×××っていうんだ」
「そうなの、どこかで会ったことある?」
「…ないよ」
「だよね、俺君のこと覚えてないもん」
「そりゃ、会ったことないんだから覚えるも何もだろ」
「確かに、そっか」
「お前の名前は?」
「俺?」
「俺が名乗ったんだから、お前も名乗らないと平等じゃないだろ」
「そうだね。俺の名前は…」
「うん」
「あれ?…名前、思い出せない」
「…大丈夫だぞ、お前はいつ戻ってきても、俺らが支えてやるからな」
「…頭、痛…」
「心配することはない、はやく帰ってくるんだぞ」
「…君は、」
「俺は…お前の友達なんだ」
「なんで…」
「…落ち着け、どうせなんとかなる」
「…う、ん」
「じゃあ、また後でな」
「…あ」

「俺って、誰だっけ」

3/24/2025, 10:21:44 AM

君は、冬の日坂道で滑って、車に轢かれて死んだ。

と思っていたのに。
目の前には、君の姿があった。
傷ひとつない、いつも通りの笑顔を浮かべる君。
「なんで」
君の目を見てそういうと、君は椅子から立ち上がって、こちらに歩いてきた。
「痩せちゃったね」
君の手が、俺の頬に触れる。
優しく撫でるその手は、温かい。
「…そうだね。痩せちゃった」
必死に、口角を上げて笑って見せる。
「ごめんねえ」
眉を顰めて、申し訳なさそうにする君。
「ほんとうに、死んじゃったんだ」
この温かい手の体温も、透けてない君の身体も。
生きていると思わせるには、充分すぎるのに。
「また、会いに行くからね」
「ほんとうに?」
君の手をとって、優しく握りしめる。
もう会えないだとか、もう触れられないって考えていたら、気持ちがぐちゃぐちゃになってしまう。
君が、目の前にいるのに。
「本当だよ。絶対」
俺の頭をなでて、君は、俺の大好きな笑顔でふんわりと笑った。
「忘れないでね」
そう言う君は、天使みたいに美しかった。
「当たり前でしょ、俺が忘れるわけないじゃん」
君のこと、ずっと考えてるよ。

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