「ねえ、本当に気をつけてよ」
「ごめんって〜」
バツが悪そうにして、こいつは言い逃れをしようとする気だろうが、今回ばかりは逃さない。
「いっつもそう言ってるじゃん、それなのにケガして帰ってきてさあ」
「わざとじゃないんだってば!許してよお」
「…毎回わざとじゃないっていってるけど、それにしては頻度が高くない?」
「そうかな」
「…何か、隠してるんじゃないの」
目を鋭くしてそういうと、こいつは一瞬固まったように見えた。
「もー!そんなわけないじゃん、なんでそう思うの」
「別に、何もないならそれでいいよ」
「ほんとに、何もないんだってば」
これは、嘘だ。何かを隠してる。
「…次怪我してきたら、俺、お前と関わり切るから」
「……えっ」
半分冗談、残り半分脅しで言ってやるとこいつはその大きな目をぱちぱちと瞬かせて、信じられないというふうな顔をした。
「なーんて、冗談だ」
「ちょっと待って、!?それ、本気で言ってるの!?」
勢いよく肩を掴まれて、揺さぶられる。
「いやだから、冗談だって」
「…は、ほんとに?」
「ほんとだよ」
頭を優しく撫でてやると、こいつはやっと安堵したような表情をした。
「よかったあっ…」
「でも、これからもケガをしてきたら本気で切るかもしれないよ?」
ニヤつきながらそう言うと、泣きそうな顔をしたので焦って訂正をする。
「ちょっと、なんで泣きそうなの笑、縁は切らないけど、ケガしないようにしろよってこと」
「泣きそうじゃないもん、ないてるんだもん」
「泣いてんのかよ笑」
「…じつはね、こうやっていつも怒るとき、ちょっと怖いけど、この感じ俺好きなんだ」
「はー?」
「なんか、幸せーって感じ!」
俺はいつもハラハラしているって言うのに、こいつってやつは…。
「こっちは心配してるんだよ、余計な心配かけせないの!」
と、こいつの頭にゲンコツをおとす。
「いてっ!!…へへ」
「…はあ、仕方ないな」
「なに?」
「甘いもん、食べに行く?」
その瞬間、こいつはふんわりと笑ってキラキラした目を向けた。
「やった!やっぱり俺幸せ!」
「…はは」
まあ、ケガしてくんのはやめてほしいけど、このやりとりは俺も嫌いじゃない。
3/28/2025, 11:05:19 AM