いもパイン

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7/26/2025, 6:27:26 PM

涙の跡
涙は頬を伝い、やがて乾き、塩味のある結晶に変わる。その結晶の型は、想う感情により異なると言われている。嬉しければ円く、悲しければ角の鋭いものになるのだろうか。まぁ何でも良いのだが、持論に基づいて話をするならば、円い結晶を沢山生み出したいものだ。
 話は少し脱線するが、私は、人によって「優しさとは何か」という概念が異なることを少し前に改めて深く考えた。私は、父に「人にやられて嫌なことを人にやってはならない」とずっと教えられて育った。もちろん、自分がされてよければ、相手に同じようにしていいとは思っていなかった。自分より、相手の方が繊細であることに気を配る必要があるからだ。
 私は、父の言葉には、「人にしてもらえて嬉しいことは人にすべきだ」という意味も含まれているだろうと考え、両者を勝手に守ってきた。しかし、後者は「優しさとは何か」が人によって異なることによって、優しさが、迷惑や面倒臭さ、鬱陶しさに変わり、人を苦しめることを知った。少し考えてみれば、全部すぐに分かった話だが、このことを考え直せなかった。これは、良い人に思われたい、と本気で考えることがこれまでなかったことと、相手の発言の真相を軽く受け止め過ぎてしまっていたことが主な原因だと思う。自分の行いの悪さが、こんな大事なところで影響を及ぼしてしまうのかと悔やんだ。そして、自分の過ちに気づいてからは、心の底から申し訳ないと思っている。もう絶対に次がないよう、心に刻んだ。今はただ、己の未熟さに泣き、申し訳なく思うばかりだが、いつかは、またあの頃のように、円い結晶をつくりたい。ここで言っても仕方がないかもしれないけれど、あの時は、偽の余裕を見せたが、私は早く仲直りしたくて仕方がない。どうか、良い連絡が来ますように、とずっと祈っている。そして、直接すぐに言えず申し訳ないが、あの頃は本当にすみませんでした。この懺悔が少しでも功を成すと嬉しいな、と浅はかにそう思っています。

2/18/2025, 12:51:41 PM

手紙の行方
「近ごろは、まだ寒いですが、お元気ですか?お体には気をつけてください。たまには、連絡してね。さて、今回もお野菜を送ります。足の早いものから、食べてくださいね。」
段ボールに手紙を入れた。何とも言えぬ、穴の開いた気持ちを胸に。

12/31/2024, 10:21:48 AM

良いお年を

今年は、何人に言われるのだろうか。
友よ、あと何回言ってくる?
勝手な解釈だが、「良い一年にしろよ」と言われている気がする。
人に自分の幸せを願われるというのは、気分がいい。
友よ、あと何回言ってくれる?

9/5/2024, 7:30:14 PM

貝殻
そのへんに落ちていて、目に留まることのない貝殻。
砂浜を歩いていると、稀に踏みつける。
ジャリジャリと音を立てているのは、砂か、貝殻か、捨てられたゴミクズか。答えなんて出せないけれど、いま一度地面を踏みつける。はっと、我に返ると、日差しの熱さに気づく。半袖を着る自分の腕は、仕方がなく焼かれていた。たまに吹く温められた風のせいで、髪は、悔しそうに絡まっていた。そんなこと気にも留めないで、海は、蒼く光っていた。
私は、なんとなく微笑んだ。いつしか、生きていた貝にならって。

7/31/2024, 4:29:33 PM

だから、一人でいたい。
彼に勝てた。いつも、尊敬していた、彼に。私は、彼を超えたんだ。
嬉しさが、心の底から、込み上げてくる。観客の楽しそうな顔には、沢山の感情が込めているように感じた。でも、ただ一人、彼の顔だけが、見られない。今になって、何だか申し訳なくなってしまった。そんな自分が、情けない。嬉しさを素直に面に出せず、微妙な顔をしていると、彼に、拳を突きつけられた。彼は、「喜べよ、俺に勝ったんだろうが。」と言い、涙を流しながら、不器用に笑っていた。彼の優しさか、強さか、何が私を感動させたのか、まだ私には分からなかったけれど、一生懸命に泣いた。彼は、私の手を取り、抱き寄せた。私の耳元で、彼は、「ありがとう。」と言った。
彼の背中は、まだ遠く、彼の力は計り知れない。私は、そう悟った。

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