いもパイン

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だから、一人でいたい。
彼に勝てた。いつも、尊敬していた、彼に。私は、彼を超えたんだ。
嬉しさが、心の底から、込み上げてくる。観客の楽しそうな顔には、沢山の感情が込めているように感じた。でも、ただ一人、彼の顔だけが、見られない。今になって、何だか申し訳なくなってしまった。そんな自分が、情けない。嬉しさを素直に面に出せず、微妙な顔をしていると、彼に、拳を突きつけられた。彼は、「喜べよ、俺に勝ったんだろうが。」と言い、涙を流しながら、不器用に笑っていた。彼の優しさか、強さか、何が私を感動させたのか、まだ私には分からなかったけれど、一生懸命に泣いた。彼は、私の手を取り、抱き寄せた。私の耳元で、彼は、「ありがとう。」と言った。
彼の背中は、まだ遠く、彼の力は計り知れない。私は、そう悟った。

7/31/2024, 4:29:33 PM