金曜日の夜の七色セレナーデ
街は輝きだす七色に
暗い闇夜を切り裂くように
今夜出かけよう
高層ビルと高速道路をまたいで
煙吐く沿岸の工場地帯
キラキラ輝く雪降る夜のように
飲み込んでしまえばいい
孤独のロマンスなんて
新しい過去、懐かしい未来
ただいま、後悔
ようこそ、希望
死んでも離れたくないなと思うよ
そうさ僕らは歌いだす、金曜日の夜に
悲しみも喜びも友達にしてしまおう
闇を押し退け、悪魔に恋して
青いこの惑星の真ん中に立とう
たいくつなキャンバスに色づけよう
街のコンサートホールに行こうよ
死んでも離れたくないなと思うよ
永遠に続くラブソングを歌おう
死んでも離れたくないな
永遠に続くセレナーデを奏でようよ
クラィ
僕は逆さまになった箱庭から落ちていく
誰も見向きもしない、ガラスケースの中なんて
言っておくけど
世界が終わってしまうのは僕のせいじゃないから
タバコの灰が濡れたコンクリートに落ちるとき
僕は見向きもしない、雨が降っている空なんて
言っておくけど
僕が泣いているのは君のせいだから
涙の雫の中で君は溺れてしまう
そして地面にぶつかってくだけちまうんだ
叫んでもいいし、喚いてもいいよ
音は遮断されているからね
どこへ行けばいい?
誰に求めればいい?
優しい煙に包まれて、裸で抱き合って
その後に虚無感に襲われて泣くんだ
快楽は麻薬のよう
大丈夫、僕らは地面にぶつかって
やがてくだけちまうんだから
星屑のように
魂はバラバラに
そして、暗黒に消えていくだけ…
出血する地球の話
足元に、朽ちたAKが落ちていた。
そのすぐそばに、焼けただれた男か女か分からない黒い塊がうつ伏せで倒れている。
夜間なのにとても明るい。僕らはハンビーとともに行軍という名のピクニックをしていた。いくつもの焼死体をまたぎ、油田の燃えるにおいを嗅ぎながら、油でベトベトした砂を踏みしめて歩く。
地球の肥溜めのような場所からは火が吹き上げ、大地を妖しく照らしていた。それはマグマのように流れ、出血しているようにも見える。
どこもかしこも死体だらけだ。兵士の死体かレッドゾーンからグリーンゾーンへと逃れてきた市民かは知らない。ただ、死体は僕らを殺しに来ることはなかった。僕らは油でぬるぬるした装備一式を手持ちの水筒で洗い流した。東の空で味方のA-10の飛行音を聞いた。やれ、やっちまえ。敵の車両をズタズタにしてやれ。僕らはM16を掲げて空に向かって大声で吼えた。
合衆国からここへ来てもう200日が経過していた。僕はまだ一人も殺していない。仲間たちもだ。死体はそこら中にあるというのに、本当に何もしていなくても行く先々に争いの痕跡が残っていただけ。きっと空軍や陸軍が掃除してくれたんだろう。海兵隊はただ怯えながら、歩くだけだった。
目が覚めないんだ。眠らずに僕らはずっと歩き続けている。合衆国に帰りたいと思っていたはずなのに。異国の死体に囲まれて、家族の元へ帰ることを忘れて。ここはどこだ? 中隊長は黙って歩くよう命令する。地球が血を流している。合衆国市民はラジオで大統領演説を自宅のソファーで寝転んで聞くだけ。地球が血を流していることなんて知りもしない。
僕らが死んだって、誰が気にかけるだろう。僕らはいつの間にか砂漠の砂となって朽ち果てていく。
あのAKのように。
あの焼死体たちのように。
ホワイトハウスに星条旗が掲げられても、僕らの魂はまだこの地獄をさ迷い続けていた。
僕のもの
トリコロールの旗をたなびかせて
君は大通りへとやってくる
薄暗い地下室から這い出て
僕は暗黒を打ち消す歌をうたおう
風が吹いている
強く
強く
僕を希望の路へといざなうんだ
君は僕の未来予想図
君は僕のプラネタリウム
君は僕の宮殿の皇女
風が地下室の中へと流れ込んでくる
あまりに強くて大きな風が
世界を呑み込もうと強く吹くのさ
君は危うく旗を手放しそうになる
ちゃんと持っていなきゃ
僕を導いてくれる自由の女神よ
君は僕のもの
君は僕のものなんだ
君はありふれた世界を照らす光なんだ
さあ、心の闇を消してくれ
風が吹く
あまりに強くて大きな風が。
クリーピーパスタ
2009年、俺がノースダコタ州で幼少期を過ごしていたある夏の夜、ソイツは現れた。
異形。
全身真っ黒のスーツ姿に白いのっぺらぼう、9フィートはあろうかという身長は細く痩せており、背中から無数の触手を生やしていた。
アイツは人間じゃない。怪異そのもの。
その夜、俺は死んだ祖父から買ってもらった双眼鏡で近所の森を部屋から観察していた。ソイツは現れた。数人の女児を引き連れて、森の中でおぞましいことをしてやがったんだ。
あれは悪夢なんかじゃない。内臓が弾ける音、骨が割れる音、ちゃんと聴いてしまったんだ。不思議なことに誰一人悲鳴を上げなかったことを覚えている。
以来、俺は小学生に上がる頃に都市部へ引っ越してそれっきりさ。
だけど、今でものっぺらぼうのアイツにじっと見つめられてるんじゃないかと、20年経っても背中に冷たいモノを感じている。