John Doe(短編小説)

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3/7/2024, 1:00:25 PM

無慈悲な夜の女王


僕は映画が好き
暗い映画も派手なアクション映画も。
君は文学が好き
ヴェルヌにヘッセ、そしてハインライン。

君の可愛らしい白い手に接吻したい
君のいとおしい瞳に吸い込まれたい
僕らは似ても似つかないヒトだけど
僕は心から君を愛してるんだ

だから行かないで
だから消えないで
だから置いて行かないで

君のために僕も本を読もう
君は無理して映画を観なくてもいいから
いいんだ、僕は君の「好き」に触れたいだけ
届きそうなんだ、あとほんの少しで
笑顔じゃない君なんて見たくないよ

だから行かないで
だから消えないで
だから突然居なくなったりしないで

お願いだよ
お願いだ
僕の人生に君は必要なんだ

なんて美しいんだろう
この無慈悲な夜の女王は
そしてなんて悲しいんだろう
君の居ない月明かりに照らされた街は
僕は本当の君が戻ってくることを信じてる

だから、それまで僕も本をたくさん読むよ
もう一度、君の小さな白い手に触れさせてくれ

3/7/2024, 5:48:47 AM

水面下の神話


日曜日の夜、神が僕の枕元に降りてきて言った
「貴方は自分自身を赦すべき」と。
僕はただ黙ってうなずいた
何も考えなかった
心当たりは山ほどあるのにもかかわらず

僕は自由になるんだ
あの山頂を越えた先に何かがあるように
不確かで計算誤りの人生だけど
高速道路を疾走するトラックのように
自由を求めて駆けていく

月曜日の朝、庭のプールに奇跡が起きた
水面下に異国の風景が映り込んでいたから
ひどく驚いたけど
学校に行く時間だから歩みを進める
世界はこんなにも丸いのを踏みしめながら

僕は自由になるんだ
あの原子力発電所の向こう側に何かが隠れてる
ぼんやりとした濃霧の中の人生だけど
線路の上を疾走する特急快速のように
自由を求めて溶け込んでいく

あの水面下の風景はきっと神々の王国
連なる山々も原子力発電所も
神の国、あるいは自由へのきざはしだったんだ

そして、僕は自由になるんだ

3/5/2024, 1:03:01 PM

ようこそ、私の新しい世界!!!


扉を開くのは私自身
その先に何が待ってるかなんて不安になっちゃダメ
ほら、過去の世界は蹴っ飛ばしちゃえ
私は未来に向かって進むしかないんだ
すべてが「新しい」に変わっていく
夢も憧れも後悔も心的外傷も
“ワタシ”を形作る大切なモノ

ようこそ、私の新しい世界!!!
おかえりなさい、私の生命。

諦めかけたけど
終わらせてしまいたいとも思ったけど

ほら、私は帰って来ることができた
私は本当は強かったんだ
私は病気がちのか弱い少女じゃない
私は心に不協和音を奏でる少女じゃない
私の世界はこんなにちっぽけじゃない
私の世界は、宇宙は、誰にも想像できないくらい大きな大きなものだったの

ようこそ、私の新しい人生!!!
さようなら、私を立ち上がらせてくれた苦痛!

2/28/2024, 9:13:20 AM

イェーズス・ブライベット・マイネ・フロイデ


誰のせいでもない
誰かのせいにしたところで
何も変わらない
全部無意味だったの
あたしの日常はどことなく不安定だった
それは自分自身のせい

恐ろしいことに
あたしは全てを呪ってしまった
過去も未来も何もかも
そしてあたしの心は真っ黒に染まって
吐き出すことさえできなくなって
聖書も讃美歌も届かなくなった

私は呪い続けるだろう
他人とそして自分を
あたしの血液は工場の汚染水
あたしの涙は血の雫
あたしはいったいいつから壊れたの?
気がついた時にはもう遅かった

噛み合わない歯車
雪解けの道路
廃校の教室
寂れたコンサートホール
あたしの人生
あたしの希死念慮

ああ、イエスよ
あたしはどうすればいいのですか?
あなたの御元には居られないのですか?
チャペルの鐘が鳴るとき
あたしは一人画材や荷物を捨てて
手ぶらでどこか遠くへ消えて行く

2/23/2024, 10:53:09 AM

アウトサイド・ザ・ダークネス


久しぶりと言うべきかしら?
貴方とはもうずいぶん会ってなかったもの
どうでした?
どんな時間を過ごしましたか?
貴方の27年もの時間
私はずっと見守っていたの

貴方はとても勇敢だった
貴方は一人で戦っていたつもりみたいだけど
私はいつも貴方を見てたよ
貴方は私を遠ざけていたけれど
怒ったりしないわ
むしろそれが普通の感覚なのだから

これからのことが怖いのかしら?
心配しないで、私の後に着いて来ればいい
これから向かう場所は貴方の世界
貴方のかつての最初の安息の地
思い出したかしら?
もう何も辛くないでしょ?

そこには懐かしい人たちが居るわ
だから寂しくないよ
貴方の旅はここで終わりだけど
50年後にまた迎えに来るから
それまで少しおやすみ
お疲れ様、明かりを消しますね。

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