4la

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8/23/2022, 6:04:17 PM

ぼくは海のある所が好きだ。

海は一つしか無いのに、時間や場所によって全く違った物に見える。

この町の暖かくて黒々とした海も。あの港の流れのない濃紺の海も。あの岬の激しく白い海も。あの岸の澱んだ赤茶の海も。
全部一つの海。

どんな姿でも海は堂々としている。

ぼくは自分の色々な姿を、内側に隠してしまって、自分を縛ってしまう。

しかし、海へ眼を向けると、ぼくも少しばかり、自分を自由にする事ができる。

いつか出会う新しい海へ。
お世話になります。どうぞ宜しく。

8/19/2022, 4:13:27 PM

海の向こうに見える山の頂には、低くて暗い雲が触れていて、
ゆっくりとこちらに向けて滑り降りているようだった。

少しもすると、ここもあの影の下になってしまうのだろう、そんな直感から、僕は坂を降りる足を急がせた。

空模様にはそれぞれ匂いがある。
やわらかに晴れた春の日は、もぎたての苺。
梅雨の雨上がりは、アスファルト。
目の眩むような夏の日は、水をたっぷり与えた芝生。
秋の曇り空は、図書室。
唯一香りがしないのは、真冬の真っ暗な北海道の夜。

部屋の暖炉や、手の中のグラスの放つ、パチパチ、トロトロした刺激的な匂いも、一歩外に出て、空を見れば一瞬で消えてしまう。

日々の忙しさや厳しさにばかりに縛られてしまうと、分かり易い音や香りや情景にばかり気が向いてしまい、隠れている空の匂いに気付かなくなってしまう。

海の渡ってきた雲の落とす夕立の匂いはどんな風だったろうか。
僕は確かめるために、坂を降りる足を緩めることとした。

8/15/2022, 1:05:14 PM

真黒な美しき怪物よ
どうか、僕を抱いてくれ。

君の大きな体は沢山の命を湛えていて、その下には多くの死が眠っている。

真黒な夜の海の下。
そこには静かな揺らぎがあって。
いつも僕を待っている。
いつか誰もが行くところ。

僕の大叔父さんもそこにいて。
僕をいつも待っている。

渚に足を浸すと、溢れたインクの様に黒くてしっとりした手が僕を優しく引っ張る。

いつか行きます。待っていて下さい。

黒い怪物に静かに呟く。
彼は何度も何度も僕に触って返事をする。

8/4/2022, 5:10:12 PM

出て行こうこの街を

ここは真昼でも影に覆われていて
真夜中でも陽に焼かれる

気づいたんだ、ここにいたら余計に磨り減ってしまうだけだって

出て行こうこの街を

そうすればきっと少しは楽しくなるはず

この街は晴れていてもびしょ濡れになってしまって
雨の日でもカラカラになってしまう街だから

つまらない事でも
どんなにつまらない事でも

きっと別の街でなら
変わる様な気がするんだ

8/1/2022, 1:19:30 PM

もし明日晴れたなら。

学校を抜け出して、公園に行くんだ。君と一緒に。

あの池のある公園に。

小さなカフェと大きな緑と、敷き詰められた青と。

半日だけのアヴァンチュール。

カフェテラスに流れるシナトラがどう歌おうとも、この関係が続く事はない。

それでもいいんだ、時が来れば飛び去るだけ。

はっきり言わせないで欲しい。
ただ、いま一緒にいたいんだ、なんて。

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