痛くて、辛くて、怖くて、惨めで、酷くて、卑しくて、厭らしくて、浅ましくて、愚かしくて、壊したくて、壊れてしまいたくて、それでも壊れられなくて。
だけども鏡の中の自分は笑っているのだから、私は今日も、上手に仮面をつけて生きているのだろう。
声が枯れるまで歌い続けてでも、伝えたい気持ちがあったはずなんだ。
直接言葉にするのは恥ずかしいから、想いを載せた歌を歌ったはずだった。
互いに励まし合って笑い合って、夢に向かって歌い続けたはずだった。
でも結局、私の声が貴方の心に響くことは無かったね。
貴方の心を捕えたのは、隣に立っていた私の歌じゃ無かった。
こんなことなら最初から想いを言葉にすれば良かった、なんて。
嗄れた喉の掠れた声じゃ、もう何も伝えられないけど。
始まりがあると言うことは、終わりもあると言うことで。
人との新しい関係を始める時にはいつも、それが終わる時のことも考えてしまうのだ。
自分から近付くことは無い。始まりはいつだって手を差し伸べてくれる相手任せだ。
そんな優しい君に出逢わなければ、きっとこの終わりを考えることも無かっただろう。
まぁ、自業自得ではあるのだけど。
もう動かなくなった君を想いながら、また次の誰かとの始まりに想いを馳せてしまうのは、
輝かしい灯火が消える様に魅入られた、自分の罪深さ故なのだろうか。
高く、高く。
ふわふわと、プカプカと、まるで天に昇る風船みたいに。
何処までも浮いてしまいそうなほど、地に足をつけている感覚が無い。
私を地上に引き留めてくれる命綱が、何処にも存在していない。
手を伸ばしても、誰も私の手を掴んではくれない。
ずっと、自らの足で地を踏み締める人たちと同じようには歩けないの。
高く、高く。浮いて、浮いて。
いつか惨めに地に墜つその時まで、私は独り昇り続けるのだろう。
夕陽が照らす二人分の影が、付かず離れずなことが我ながらもどかしかった。
家が近くて付き合いが長かったから。ただそれだけの理由でいつも同じ道を並んで帰った。
次第に遠くなる運動部の掛け声や吹奏楽部の楽器の音が、夜を迎える街に溢れゆく喧騒が、他愛も無い日々の会話の後ろに流れていたことを覚えている。
放課後、家に着くまでのほんの十数分の距離。
実際に触れ合ってなんていないのに、少し大きく腕を振れば影同士は触れ合うみたいに重なって。
視線を交わし合わずとも。影だけは、確かに互いを見つめていた。