霜で繋がった落ち掛けのを見た時、命の儚さを見た気がしたの。
日が昇ってくれば霜が溶けて、ぼとりと落ちてしまうことが見えているその姿に──、
この冷たい朝がずっと続けば良いのにって、出来もしないことを願ったりしたの。
決して見えず、決して触れられないはずの他人の心に触れたいと思うのは、無茶なことなのだろうか。
明確に交わることの無いその境界に触れ、グズグズに溶け合ってしまいたいと願うのは……ただの我儘なのだろうか。
溶け合うことが出来ずとも、貴方が他人を拒むその心の境界線と、私の心の形がピッタリと合えば良いのに。
交わらなくても、隙間無く重なり合えば……理解し合えずとも傍に居られると思うのは、ただの傲慢なのだろうか。
数奇な境遇を共有出来た時、独りぼっちだった世界に君が入って来た。
世界は僕ら二人と、それ以外だった。
君は言った。自分以外の人間は、僕にとっての敵だと。
だからいつだって君の傍に居なくちゃいけないのだと、君は無邪気な顔で笑っていた。
でも僕は知ってしまった。
僕を愛してくれる人間は、君以外にも居たんだってことを。
この世界は、敵だらけじゃなかったことを。
僕にとっての世界じゃない。
君にとっての世界こそが、僕と二人だけで成り立っていたということを。
終わってみれば、なんて呆気ない。
蓋を開けてみれば、中身なんて何も無い。
とても空虚で、ただのハリボテ。
それでも胸を空くこの想いは、確かに私にとって"恋"だった。
みっともなく泣き喚いて、泣き叫んで、どこにも行かないでと縋り付くことが出来たなら、なんて。
そんなもしもを考える時がある。
馬鹿で、愚かで、矮小で、こんなどうしようもない私のことなんか、振り返らなくていい。
脇目も振らずにひた走る、そんな貴方が好きだったから。
貴方の進む妨げにしかならない、私を置いていってくれる貴方で良かった。