NoName

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5/10/2024, 2:26:29 PM

 覚えている。
 シロツメクサの上を舞う、モンシロチョウの群れのあどけなさを。
 覚えている。
 自らの足で踏み荒らしたクローバーの中から、強く育った四つ葉を見付けて喜んだあの無邪気さを。
 覚えている。

 爪先の鱗粉も、擦れる翅の感触も、小さな生命が掌の中で静かに終わる、その刹那も━━幼気な残虐さの前では、ただの玩具に過ぎなかったことを。

5/6/2024, 4:54:51 PM

 明日世界が終わるなら、「また明日」なんて挨拶も意味の無いものになるんだろう。
 それでも昨日と同じにこの言葉を繰り返すのは、明日も同じ日常が続けば良いと願ってしまうから。
 明日も当然のように、今日と同じ君に会いたいから。

 「世界が終わる瞬間も一緒に居たい」なんて口に出せない臆病な私だから。
 せめて昨日と同じ笑顔で、君と明日の約束をしたいんだ。

5/5/2024, 6:10:00 PM

 出逢いは人を変えるなんてよく言うけれど、どうして私は変われないのだろう。

 君がどれだけ笑顔でいても、私は同じもので笑えない。
 君がどれだけ泣いていても、私はそれを慰める言葉が解らない。
 君がどれだけ怒っていても、私はその原因を理解する術を持たない。
 君がどれだけ想ってくれていても、私は同じ気持ちを返すことが出来ない。

 君と出逢っても、私の世界は変わらなかった。
 ただひとつ、
 私と出逢って変わってしまった、君の気持ちを羨む心以外。

4/14/2024, 2:10:40 PM

 誰の手も届かない存在でいてほしい。
 凡人とは一線を画した存在でいてほしい。
 我々の理解の範疇を超えた存在でいてほしい。
 こちらを見下ろすことすらしない、孤独で孤高の存在でいてほしい。

 嗚呼、私の神様。
 どうか、普通の人みたいに笑わないで。
 人の輪の中に溶けて行かないで。
 その瞳に誰のことも映さないで。
 私たちと同じ地平に立たないで。

 只人に堕ちた貴方に、追い付けない私が惨めになるから。

2/11/2024, 10:53:02 AM

 どうして、約束なんて不確かなものに縋ってしまったのだろう。
 どうして、あの日あの時この場所に、君は来てくれなかったのだろう。

 当たり前に過ぎる今日も、当たり前に来てしまう明日も、当たり前に回り続ける世界も全てが嫌いで堪らない。
 私だけがこの場所から動けないことを、どうしようもなく実感するから。
 あの日の君と同じ場所で立ち止まっていたいだけなのに、それを赦してくれない時の流れが大嫌い。

 だから、今日も叶わぬ夢を見る。
 もう君が決して来ることの出来ないこの場所で、君が約束を果たす日を待っている。

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