深爪。
オレンジに染まった爪先が醜く見えて、爪を噛む。
血の滲む痛みよりも、爪先に詰まった異物が不快だった。
それじゃあ痛いでしょ、と君は少し呆れた顔で笑った。
温かな手が私の手を取り、歪な爪先に優しく触れる。
皮を剥く度にそんな顔をするならと、口元に果実が差し出される。
その表情が癪に障って、差し出された指先ごと齧り付く。
瞬間、ニヤけた口元と力の籠った指先に気付いた時にはもう手遅れ。
あ、食べられる。
口の中で弾けたみかんと共に、君の血の味がじんわりと広がった。
12/29/2024, 10:03:58 PM