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 夕陽が照らす二人分の影が、付かず離れずなことが我ながらもどかしかった。

 家が近くて付き合いが長かったから。ただそれだけの理由でいつも同じ道を並んで帰った。
 次第に遠くなる運動部の掛け声や吹奏楽部の楽器の音が、夜を迎える街に溢れゆく喧騒が、他愛も無い日々の会話の後ろに流れていたことを覚えている。

 放課後、家に着くまでのほんの十数分の距離。
 実際に触れ合ってなんていないのに、少し大きく腕を振れば影同士は触れ合うみたいに重なって。
 視線を交わし合わずとも。影だけは、確かに互いを見つめていた。

10/12/2024, 7:03:45 PM