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4/15/2025, 3:36:01 AM

未来図


君の描く未来図に、僕はいるのかな。

願わくば、どんな形であってもかまわないから、君を見守らせてほしいんだ。

頑張り屋で、涙脆くて、おっちょこちょいで、いつも優しい君だから。

頑張り過ぎてないかな?

今、泣いてないかな?

怪我とかしてないかな?

自分でも気が付かない内に、我慢しちゃってないかな?

とか、君のことを考えると、心配事にキリがなくて。

だから、どうか、君の未来に、僕をいさせてほしい。

そして、我儘が許されるのなら、君の幸せそうな笑顔を、いつまでも眺めさせてほしいんだ。

それが、僕の描く、幸福な未来図だから。


End




4/14/2025, 3:45:06 AM

ひとひら


ひとひらの花びらが、目の前を歩く、俺よりだいぶ身長の低い彼の頭に落ちるから。

あ、と気が付くなり、俺は彼の頭に手を伸ばしていて。
そのまま、そっと、頭の上の花びらを掴めば。

彼がくるりと、振り返って。

「なんだよ、チビだってバカにしてんのか?」

あぁ?なんて、凄んでみせてくるけど。

俺からすれば、小型犬が可愛く吠えているようにしか見えないから。

堪らず、彼の頭をくしゃくしゃと撫でてしまう。

それに、益々、小さな彼はぶつくさと文句を言ってくる。
顔を真っ赤にした彼が、やっぱり可愛くて。

俺の心に、ひとひらの淡い気持ちが募った。


End

4/10/2025, 6:52:06 AM

元気かな


お前は最近どうかな?

元気でやってる?

俺は元気でやってるよ。

仕事が忙しくて、毎日があっという間なんだ。

お前の方はどう?

お前の方こそ、俺なんかより忙しくしてるんだろうな。

無理はするなよ、お前は人一倍責任感が強いんだからさ。

俺のことは心配しなくても、大丈夫。

俺はさ、お前と違って、いいかげんだからさ。

てきとーになんとかやってるよ。

……って、ごめん、ちょっと嘘吐いた。

毎日、忙しいし、あっという間なんだけど、一人の夜は長く感じるよ。

お前はどう?

元気でやっててほしいけど、お前もちょっとぐらい、俺と同じ気持ちだったら良いんだけどな。


End

4/9/2025, 10:48:01 AM

遠い約束


『ねぇ、いつか、俺をここから連れ出してね』


それはそれは、叶えられるはずのない、無謀な約束。

幼い、俺と君の、遠い約束。


もうどれぐらい時が過ぎただろう。
ベッドから、眺める景色が何度も春夏秋冬、過ぎて行って。
変化にも、何も感じなくなってきた、この頃。

君の顔さえ、思い出してみても、何も感じない。
最初の頃は、悲しくて、嬉しくて、涙が溢れていたのに。

……でも、きっと、これで、良いんだ。

君には、俺のことなんて忘れて、自由に生きてほしいから。

だから、これで良い、のに。

「……っ、何、泣きそうになってんの、俺」

涙なんて、もうとっくに枯れちゃったと思ってたのに。

何も感じないなんて、ほんとは嘘だ。

ほんとは。

「……一人は寂しいよ、迎えに来てよ」

そう、俺が思わず、感情を吐き出した時のこと。

ずっと、開かなかったドアが開いて。

反射的に、俺がそっちを見れば。

「約束、果たしに来た。俺とここを出よう?」

なんて。
俺の目の前には、ずっと待ち続けてきた、君がいて。
目を見開いて、固まる俺をそっと抱きしめてくるから。

俺は泣いた。
こんなに、大声を上げて泣いたのは、君とあの約束をした日以来だった。


End

4/1/2025, 6:47:57 AM

またね!


またね!

君は軽快に笑って、僕へと手を振って、駆けて行く。

それが、君からの僕への最後の言葉になるなんて、知らずに。


君は死んでしまった。
事故だった。

もし、時間が巻き戻せるなら。
あの時に戻って、絶対に君を行かせたりしないんだ。

だから、どうか……。


「またね!」

君の軽快な声に、はっとする僕。

……何が、どうなってるん、だ?

「何、キョトンとしてるんだよ?」

そんな可愛い顔してたら、ちゅーしちゃうぞ?
と、目の前の彼が、顔を近づけてくるから。

状況が読み込めない僕は、固まったまま。

すると、益々彼の顔が近づいて。

ちゅっ、と。
僕の唇にキスを落とした。
その感触が、ひどく鮮明で。

僕はわけがわからないまま、涙を流した。

「……ねぇ、もっとして?」

そして、どうか。
もう、僕を置いていったりしないで。


End

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