うどん

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4/5/2024, 1:27:30 AM

同じ家で生活するようになるまでは、こいつのここが好ましい、ここが苦手、という割合は好ましい部分の方が多かった気がする。

根本的に合うなぁと思ってたから一緒に生活し始めたわけで。

んで、生活してみると嫌なところがまぁ出てきた。


「なぁなぁスマホ充電器に差してくれん?」

「ティッシュ取って〜」

「あ、そこのお茶取って」


たった一歩動けば自分でできるやろ、と思いつつ言うことを聞いてやっている。


「お前のそういうとこ好かんわ〜」

そう言うと、それを言うなら俺もお前のこういうとこが〜となぜか最後は俺が責められることに。

解せぬ、と思いながらもお互いの顔は笑っていることに気づく。


嫌なとこもひっくるめて、好きなんやろうな、と他人事のように思った。



【お題:それでいい】

4/3/2024, 2:39:39 PM

1つだけ願いが叶うとしたら何を叶えてもらいたいか。

職場の同期との飲み会も終盤、現実的な自分にはとても難題に思える話題で盛り上がっていた。

同期たちは口々に「使っても減らん財布が欲しい」「健康な身体一択やな…」「可愛い嫁さん」「俺は優しい嫁がいい」「ドラえもんがほしい」「それはもうチートやん」などと想像以上の盛り上がりをみせていた。

目立たぬよう笑いながらその場をやり過ごし、二次会は遠慮して帰宅する。

「ただいまぁ」

キングサイズのベッドの端っこで腹ばいになりながら漫画を読んでいる男が「おーおかえりぃ。なんや早かったなぁ」と笑う。

「シャワー浴びてくるわ」

「おん」


何も浮かばなかった願いだが、あの男ならなんと答えるだろうか。
自分には願いが浮かばないので、代わりにあの男の願いが叶えばいい、そんなことを思いながら急いでシャワーを済ませた。


「飲み会、楽しくなかったんか?」

ベッドに広げていた漫画は片付けられ、コーヒーを淹れて待っていてくれたようだ。

「いや?楽しかったで。ちょっと最後の話題に乗れんかったなと思って」

「…なんの話題やったん?」


…なんか神妙な顔しとるな。

「あぁすまん。紛らわしかったな」

コーヒーを貰いながら謝りつつ、先程の話題を説明した。


「なんか嫌な思いでもしたんかと思ったやないか。…願い、なぁ。んーなんやろなぁ」

大概この男も現実的なのだが、楽しそうな顔をして考えている。

「決めた。お前の願いが見つかりますように、や!」

「なんて?」

「お前の願いが、見つかりますように、や。」


途端、訳も分からず涙が込み上げそうになり、慌ててコーヒーを飲み干して、そのまま噛み付くようにキスをした。
泣くのを我慢してるのなんてお見通しや、とでもいうように、舌であやされながら背中にそっと回された手が優しくて、キスをしながら泣く、なんて器用なことをしてしまった。



この男が自分の人生にずっといたらいい、と思った。




【お題:1つだけ】

4/2/2024, 12:48:12 PM

大切なものはたくさんある。
家族、友達、音楽、本、仕事、健康、…あとなんやろな。

無理矢理挙げてはみたものの、正直そんなにしっくりくる感じではない。


隣で静かにすやすや寝ている男の顔を見る。
気持ちよさそうに寝てるなぁ、と思いながら悪戯心が湧き上がり、徐に形のいい鼻梁をつまんだ。

イチ、ニィ、サン…

「ンガっ…んん??なにぃ??」

半覚醒の状態のまま目も開けられず、もごもごと文句を言う男。

「くく…っ。すまん、なんでもない」

ポンポンと布団を叩くと、もにゃもにゃ文句らしきものを言いながらまた眠りについた。


歳下だけど妙に包容力があって。
優しさと芯の強さを兼ね備えていて。
年相応に甘えてくる可愛さもあって。

何より気負うことなく自然な自分を出せるこいつの側で過ごす時間。

それが今の自分にとって一番……


そこまで考えたら途端にむず痒くなり、若干顔を顰めつつ男の隣にそっと潜り込んだ。


【お題:大切なもの】

4/1/2024, 1:07:31 PM

「俺、来週中にこの家出てくわ」

「…は??え、なんで??」

「ふはっ…思ったより盛大に引っかかってくれたなぁ?今日はエイプリルフールやで!」

「……」

「…あれ?怒ったんか??」

「あのさぁ。エイプリルフールってな。午前中にしか嘘ついたらあかんのやで。知らんの??」

「エッ?そうなん??え、なんで????」

「やーい引っかかってやんの」

「……」

「…ん?怒った?」

「怒ってません!」

「ふはは」



【エイプリルフール】

3/31/2024, 10:55:33 AM

「幸せになって、ってこんなに言われたこと、今までなかったなぁ」

卒業式を終えて、誰もいなくなった教室で2人。感傷に浸っていたら、ふとそんな言葉が聞こえてきた。
やたら大人びて見える穏やかな笑みを浮かべながら、後輩たちに貰った花束や色紙、プレゼントを見つめる顔があった。

「お前が思うよりもたくさんに想ってもらってたみたいやなぁ」

「せやなぁ」

口ではそんなことを言いつつも、明日以降、今後会うことはおそらくほぼないだろう後輩や級友たちを頭に浮かべ、湧き上がる優越感に浸る。

こいつがこれから先、幸せに過ごす姿を見れるのは、自分だけだ。

ふと湧いた感情に、自分にそんな独占欲があったのか、と驚く。


「俺のこと、幸せにしたってや」


独占欲に気づいたのか否か、こちらを見て微笑む男に、当然やろ、と返した。



【お題:幸せに】

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