大切なものはたくさんある。
家族、友達、音楽、本、仕事、健康、…あとなんやろな。
無理矢理挙げてはみたものの、正直そんなにしっくりくる感じではない。
隣で静かにすやすや寝ている男の顔を見る。
気持ちよさそうに寝てるなぁ、と思いながら悪戯心が湧き上がり、徐に形のいい鼻梁をつまんだ。
イチ、ニィ、サン…
「ンガっ…んん??なにぃ??」
半覚醒の状態のまま目も開けられず、もごもごと文句を言う男。
「くく…っ。すまん、なんでもない」
ポンポンと布団を叩くと、もにゃもにゃ文句らしきものを言いながらまた眠りについた。
歳下だけど妙に包容力があって。
優しさと芯の強さを兼ね備えていて。
年相応に甘えてくる可愛さもあって。
何より気負うことなく自然な自分を出せるこいつの側で過ごす時間。
それが今の自分にとって一番……
そこまで考えたら途端にむず痒くなり、若干顔を顰めつつ男の隣にそっと潜り込んだ。
【お題:大切なもの】
4/2/2024, 12:48:12 PM