NoName

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10/17/2024, 5:11:22 AM

お題 やわらかな光


真っ暗で何も見えない。
何日、何週間、何ヶ月?
どのくらいここにいるかも分からない。
暗くて狭い何も無い部屋。

だが度々お客が来る。
ゆっくりと重い扉が開き
ぼやっと光が差し込む度に暗がりに慣れた目が
眩しいと主張する。
そして小さな少女がそっと中へ入ってくる。

...また、来たのか。

このところ毎日、だろうか。
触ればすぐに崩れてしまいそうなおにぎりを持って
私のところに来る変わった少女がいた。
少女は笑顔で私におにぎりを差し出して私の前に座る。
そしていつものように楽しそうに話し出す。
私は、そっと頷くだけで特に何も話してやった事は無い。
だがその少女はそれでも楽しそうに楽しそうに話をする。
今日あったこと、昨日あったこと。
私が外の世界を知らないとでも思っているのだろうか。
私に教えるように、言って聞かせるように、
色んな話をする。
少女は私が話したいから。と言って来てくれているが概ね私のためだろう。
ここに来るのも容易ではないはずだ。
毎日、おにぎりを作っては大人の目を掻い潜ってここに忍び込む。
それだけでこの少女は本当に心の優しい人間なのだとわかる。
次第に私は少女が来るのが少し楽しみになっていた。
ここにいたってなんの代わり映えもしない真っ暗な世界があるだけだ。
楽しくなかったとしても、少し気晴らしにはなっていただろうが。

少女は私を怖がらない。
少女は何も知らない。
少女の優しさが、明るさが真っ暗な私を照らす。
だが、もう救われることは無い。
私の結末は決まってしまっているのだ。
だから、どうか今この瞬間だけは、その自分の結末を忘れて
このやわらかく、あたたかい光に包まれていてもいいだろうか。

10/15/2024, 12:55:43 PM

お題 鋭い眼差し



はぁ......はぁ......
ゲホゲホッ.........はぁ...はぁ...

もう.........無理.........はぁ...はぁ...

自分の手は血で染まっていて自分の剣もまた血塗れだ。
だが目の前の男は自分よりも血塗れである。

何十、何百、敵を倒してきただろうか。
夜中中歩き回って敵を倒し、もう今にも意識が飛びそうだ。

なぁ、もう、もう今日はいいんじゃないか...

そう問うも男は振り返りもしなければ反応すら示さない。
そして迷いなくザクザクと薄暗い道とは言えないような山道を突き進んでいく。

はぁ......

止まる気配のない男に必死に着いていく。
もう、これ以上戦いたくないのに。今日はもう充分やったでは無いか。
明日でも遅くは無いだろう。
だがここではぐれては逆に危険だ。

待てよ...!

立っているだけで意識が飛びそうだと言っているだろう...走らせる...なっ...!?

急に立ち止まる男に体勢を崩す。

どうしたというのかその男がじっと見つめる先に目線をやれば今までとは比べ物にならないくらい大きな化け物が何やら食事中らしい。
よくよく目を凝らしてみれば食しているのは人、ではないか。
俺は今までの疲労、目眩など全て忘れるくらい一瞬で背筋が凍った。
だが隣の男は違った。
見なくてもわかる。殺意。殺意。殺意。
あつい。きっとアニメなら紫や黒や赤のオーラが見えるような、殺意を感じる。

男はこちらを見ず一言、いくぞ。
と。

その鋭い眼差しは自分に向けられたものでなくても
殺される、と思わされるようなものだった。
だがその瞳に魅了されたのもまた、事実だ。

俺は湧き上がる胸の高鳴りを抑えきれずに応えた。

おう!

10/15/2024, 4:55:40 AM

お題 高く 高く


書けなかったので思いついた時に書けるように...

10/14/2024, 8:00:38 AM

お題 子供のように



プレゼントやお土産、貰ったら嬉しいし
その物がなんであったとしても
それを自分のために考えて選んでくれたと思うと
やっぱり嬉しいものだ。
そしてあげた側もまた喜んでくれたら喜んでくれただけ嬉しいはずだ。

お誕生日おめでとう。
はい、これ。

え!いいの?ありがとう!

嬉しい。確かに嬉しい。
でも心の底から嬉しいと思っていても
子供のように無邪気に喜ぶことも
誰にでも愛されるような子みたいに可愛く守ってあげたいと思われるような喜び方も出来ない。
ましてや嬉し泣きすることなんて絶対にできない。

嬉しいんだ。本当に。愛されてるとは思う。
でもなぜこんなにも感情を表に出せなくなってしまったのだろう。
大人になるとはそういうことなのだろうか。
自分の気持ちに対して客観的な自分が
1つガラスの扉を隔てているような感覚に陥る。
そのガラスは段々と曇ってしまって
やりたいこと、好きなこと、好きなもの
何も見えなくなってしまった。
これが大人になったってことなのだろうか。

そうだとしたら大人とはつまらない生き物なのかもしれない。

でも目を凝らして見てみてもわかない。
子供の頃の自分もそんなに感情を表に出していただろうか。
皆がぱっと想像する子供のように過ごしてきただろうか。
子供らしくってなんだったんだっけ。
大人らしくってどういうことなんだろう。

私は精一杯の笑顔を作り笑った。

ありがとう。とっても嬉しい。

10/13/2024, 7:05:49 AM

ねぇねぇ
放課後、出かけない?

クシャッとした笑顔でそっと耳打ちしてくる親友は
私よりも小柄でみんなから愛されているそんな子だ。
私はこの子のことが大好きだし
きっとこの子もそれなりに私を好いてくれている。

いいけど、お金は...?

へへ、持ってきちゃった

コソコソ話す私たちを見て先生は早く帰りなさいね〜
と言いながら教室を出ていく。
もう教室には私たち二人だけしか居なくなった。
もう既に夕日が刺してきていて
日が落ちるのも早くなってきたと思わされる。

じゃあ、行こうか。

そう答えれば君はうん!と嬉しそうに頷く。

放課後、たまにこっそりお金を持ってきて
一緒に近くのショッピングモールで
何をする訳でもなく2人でふらふらする。

本当は学校にお金を持ってくるのも
放課後家に帰らず制服で出歩くのも校則で禁止されている。

早く高校生になりたいな。そうしたら可愛い制服で
いつでもどこへでも行けるのに。

そんなことをぼやっと呟けば
君はキョトンとした顔でじっと私のことを見たあと

でも先生にバレないようにこっそり遊んでるのも
2人だけの秘密みたいで楽しいよ?

と悪戯っぽく笑う。
いつもそうやって私は乗せられている。

ふふ、それもそうだね。
君とならなんだって楽しいよ。

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