お題 カーテン
ふわっと風が吹きカーテンに攫われていく君。
私の席は後ろから3番目、窓側から2番目。
私の目を奪って離してくれない彼は左斜め前。
授業中、眠そうにしている君も
隣の友達とくすくす笑いあってる君も
授業に集中してる横顔も
ちょっと頑張れなくて寝ちゃってる君も
窓の外をじっと見つめる君も。
どんな君もかっこよくてついつい目がいってしまう。
違うか。どんな君も見逃したくないのだ。
もちろん授業はそっちのけ。
隣になって話したい気もするけれど
そんな勇気は持ち合わせていないし
隣になったらじろじろ見られないではないか。
時々プリントを回す時に後ろを向く君。
その時一瞬だけ君の視界に入っているはずだけれども
きっと君の心の中に私はいない。
それでもいいんだ。私は今のままで幸せだ。
このままずっと居られたらいいのにな。
そんなことも叶わない。
テストが終われば席替え。
あーあ今日で最後だ。
くじ引きを引き終えて友達とはしゃぐ君を横目に
自分の席に戻る。
私は次は窓際の席らしい。窓際の前から2番目。
君は右の後ろの方。廊下側の席らしい。
離れてしまった。離れてしまっても
最悪君より後ろなら眺めることも出来たのに。
ついてないな。
今日から憂鬱な日々の始まりだ。
ふわっと風が吹きカーテンに包まれる私。
外を見てみると赤のジャージがちらほら見える。
先輩達が体育をしているらしい。
君は窓際で何を見てたのかな。
何も見えないよ。
お題 涙の理由
誰かの、泣いている声がする。
どこからだろう。
しく...しく.........
ここだ。ここの部屋。階段をのぼって突き当たり、
2階の少し広い子供部屋。
3段ベッドと幾つかの勉強机。
そしてその片方の勉強机の下に1人の子供が蹲っている。
どうしたの?
......しく...しく...
返事は無い。
私に気づいていないのだろうか?
私が見えていないのだろうか?
今一度あたりを見渡せば大きな窓があるものの
すべて雨戸が閉まっていて階段にある電気が一筋だけ部屋に差し込んでいる。
そして薄暗い中でもわかる埃っぽさと床に散らばるおもちゃの山。
この子はなぜこんな部屋でひとりで泣いているのだろう。
しく......しく......
相変わらず泣いているその子に
大丈夫かと問うと
ゆっくりと顔を上げて私の顔を見るや否や
......い、.........なさい、
ごめんなさい...ごめんなさい.........
と両手で太ももを擦りながら謝り始めた。
よく見てみれば太ももには包帯が巻かれているが
それは掻きむしったように荒れていて血も滲んでいた。
顔は暗くてよく見えないがこのままでは傷が悪化してしまう。
太ももから手を離させないとと思い手を伸ばした時
はっとあることに気づいた。
この子は知らない子じゃない。
この子は過去の私だ。
それに気づいてから泣いている理由を考える時間など要らなかった。
私は過去大事な時に怪我をして
それでも諦めずに動き続けた結果、失敗し、
皆を負けに導いた。
皆の記憶には残っていないかもしれない。
負けたという事実すら、もう覚えていないかもしれない。
きっと誰も私のせいだとも思っていない。
でも私は自分を許せなかった。
この子は自分に、私に謝っているのだ。
でも許されないことに、許せないことに涙を流している。
泣きじゃくるこの子や傷だらけの足をみて居たら
気づいたら私が謝罪の言葉を零していた。
ごめんね...
傷だらけなのは足だけではないだろう。
私はあの時の私を許せていない。
そしてこの子も自分を許せていない。
そしてこれからも許せることは無いのかもしれない。
私はその子の隣で頭を撫でながら静かに涙を流した。
お題 ココロオドル
ハンカチとティッシュ、お財布にパスモ
あとは何が必要だろう
出かける時しか使わない鞄を引っ張り出して
出かける時しか使わないメイク道具を探して
いつもはのんびり夜更かしをするくせに
今日は忙しなく支度をして寝る時間を決めて
きっちり行動する。
親にバタバタうるさいよなんて怒られながら
明日のことを考えるとにやにやが止まらない。
何時に起きよう何を着ていこう何時に家を出よう
ここに行きたいあそこに行きたい
そんなことを考えていたらもう寝る時間を過ぎていた。
早く寝ないと。寝坊はできない。
明日はデートなんだから。