お題 部屋の片隅で✍️
お題 太陽の下で
ほら、朝だよ。起きて。
隣に横たわる少女はぎゅっと顔を顰めたと思えば
すぅ...と再び眠りにつく。
僕たちがいるこの場所は人気のない山の中。
こんな薄暗い森にも
目覚めるには心地よく、優しい朝日が差し込む。
僕には眩しすぎるくらいなのだけれど。
顔を覗き込み、前髪をそっとかき分ければ
寝返りをうつ君の顔に木漏れ日が落る。
僕はそれを避けるように手を離して
もう一度耳元で起きてと優しく声をかけるのは
いつもの事。
少し不便なこの関係もくすぐったくて愛おしい。
んぅ...
まだ中々開かない目をしぱしぱ瞬かせながら
こちらを見る君はきっとそんなこと考えていないんだろうな。
微睡みながら君は僕の手にそっと手を重ねてふふと笑う。
罪な子だなぁ。こっちの気も知らないで。
暫くして君は朝の身支度を終え、今日も行ってきます!
とどこかへ行ってしまう。冒険好きな少女は
軽く1週間ほどは帰ってこないことだってあるし、
その度にいつも沢山傷を負ってくる。
君はここが帰る場所だと言うものの、いつも気まぐれでここに訪れる。
もういつここへ戻ってこなくてもおかしくないのだから。
僕も一緒に行けたらいいのに。
木陰と日向の境の土を撫でながら
そんな馬鹿げたことを考える。
この太陽の下で太陽より眩しい笑顔で笑う君と
歩ける日が来ればいいのに。
飛べない翼✍️メモ
お題 意味が無いこと
自分はダメだと自己嫌悪に浸ること
分かってるんだ。
意味がないって。
それでもどうしても思ってしまう。悩んでしまう。
お題 紅茶の香り
「紅茶を淹れてもらえるかしら」
そう言って目を細めて笑うのは僕の医学の先生である。
学校の本棟から離れた場所に位置する小さな教室。
先生1人と生徒がせいぜい5、6人入るほどの教室である。
しかも先生の書いた研究資料や本などが沢山積み上げられていてまともに歩けるのは先生の机の周りくらいだ。
教室の外は中庭と呼ばれているがまるで庭園のように
草木が生い茂り花も沢山咲いていて
それを横目に研究している先生はとても絵になる。
そんな先生を見始めて早4年。
最初は他の生徒もよく出入りして先生に教えを乞うていたが一切この教室に近寄らなくなった者もいれば
退学してしまった者もいてか
早々に僕と先生の二人きりになっていた。
勿体ない。こんな綺麗で素敵な先生に教えて貰えることなど今後一生ないだろうに。
まぁ、仕方がないか。
だから紅茶好きの先生に毎日紅茶を淹れるのは僕だけ。
そんなことを考えながらすぐ淹れますね。と返せば
先生は
「もう貴方に紅茶を淹れてもらうのも最後ね。来年からまた新しい子に淹れてもらわないと。」
なんて困った顔をしながら言う。
それを聞いた僕は心が締め付けられそうになりながら
先生に紅茶を差し出す。
「...寂しいですね。とても残念だ。」
そして紅茶を口にした先生は眠くなってきたと言っていつも仮眠しているベッドに横になった。
それからもう何時間も経つ。
段々と温かさが消える先生の頬をやさそっと撫でながら
「先生がいけないんですよ?
僕以外の人に紅茶を淹れてもらおうとするから。」
と呟くが先生はもう聞く耳を持っていないだろう。
ベットの横の小さな机に丁寧に置かれたティーカップから
ふわっと紅茶の香りがした。
「嫌いだったなぁ、この匂い」