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お題 太陽の下で



ほら、朝だよ。起きて。

隣に横たわる少女はぎゅっと顔を顰めたと思えば
すぅ...と再び眠りにつく。

僕たちがいるこの場所は人気のない山の中。
こんな薄暗い森にも
目覚めるには心地よく、優しい朝日が差し込む。
僕には眩しすぎるくらいなのだけれど。
顔を覗き込み、前髪をそっとかき分ければ
寝返りをうつ君の顔に木漏れ日が落る。
僕はそれを避けるように手を離して
もう一度耳元で起きてと優しく声をかけるのは
いつもの事。
少し不便なこの関係もくすぐったくて愛おしい。

んぅ...

まだ中々開かない目をしぱしぱ瞬かせながら
こちらを見る君はきっとそんなこと考えていないんだろうな。
微睡みながら君は僕の手にそっと手を重ねてふふと笑う。
罪な子だなぁ。こっちの気も知らないで。
暫くして君は朝の身支度を終え、今日も行ってきます!
とどこかへ行ってしまう。冒険好きな少女は
軽く1週間ほどは帰ってこないことだってあるし、
その度にいつも沢山傷を負ってくる。
君はここが帰る場所だと言うものの、いつも気まぐれでここに訪れる。
もういつここへ戻ってこなくてもおかしくないのだから。
僕も一緒に行けたらいいのに。
木陰と日向の境の土を撫でながら
そんな馬鹿げたことを考える。

この太陽の下で太陽より眩しい笑顔で笑う君と
歩ける日が来ればいいのに。

11/26/2024, 4:04:59 AM