気になる彼。ううん、好きかもって思っていた彼から「君が好きです」って言ってもらえた。
私は、彼に好意を寄せている人をたくさん知っている。だから自分の気持ちを封印していた。
彼の迷惑になるのは嫌だから、遠くから彼を見ているだけでいいと押し殺していたの。
それなのに。
彼は私の手を取り、真剣な眼差しで見つめてくれる。その手は少し震えているように見えて、彼の気持ちが指先から伝わる。
バカみたい。
気持ちにフタをしていたことに呆れてしまう。
「私も、だいすき」
それを彼に伝えれば良かったんだから。
おわり
六七五、バカみたい
ザザーン、ザザーン。
冷たい潮風が俺と恋人の頬を撫でる。
俺は彼女の手を取った。
冷たくなった指先が絡み合う。
「あったかいですね」
ふふっと頬を赤らめながら俺に向かって笑ってくれる。
頬が赤いのは照れたからか、風の冷たさからか。
どちらの理由でもいっか。
可愛い彼女の笑顔が見られたんだから。
ザザーン。
聞こえてくるのは波の音だけ。
でも彼女の手が、その温もりがそこに居ると分からせてくれた。
おわり
六七四、二人ぼっち
彼女の笑顔が眩しい。
誰にも見せたくないくらいの弾けた笑顔を腕に収めて離したくないんだ。
「どうしました?」
腕の中に温もりを感じて、さらに強く抱きしめると、さらに嬉しくて、寂しくて、不安になる。
だってここは夢だから。
まだ俺は彼女に気持ちを伝えてないから。
腕の中にいる彼女から、向けてもらえる笑顔に胸が熱くなる。
この幸せな夢から醒める前に俺はもう一度彼女を抱きしめた。
おわり
六七三、夢が醒める前に
最初はいつだっけ?
守ってあげたいって思った女の子だったんだ。
ろうそくの火みたいに儚くて、消えちゃいそうで心配だったんだ。
彼女の勤め先も治安悪いしね。
でも聞いてみると、彼女はその〝悪い人たち〟に大切にされている子だった。
俺が心配する必要がなくて、少しだけ距離を取ろうと思ったんだ。
それなのに。
深夜、壊れた乗り物の前で途方にくれていた俺の前に来てくれたのは彼女だった。
凄くびっくりしたよ。
俺は職場の先輩にしか連絡してないんだ。
真っ暗の中にあるのは街頭だけで、真冬の寒さは、より独りを痛感させる。
そんな時、該当の下に笑顔の彼女が修理道具を持って現れた。
びっくりしたよ。
そりゃびっくりしたんだ。
「私に任せてくださいよぅ」
頼もしすぎる言葉も、君が来てくれたことも嬉しくて、胸が高鳴ったんだ。
おわり
六七二、胸が高鳴る
救急隊員として仕事をしていると、手を伸ばしても届かない瞬間がどうしてもある。
それに慣れることなんてないんだ。
胸に傷が残るけれど、それを乗り越えなきゃいけない。
この世界から不条理が無くなるなんてない。
それをひとつでも減らせるように、頑張るしかないんだ。
おわり
六七一、不条理