今日のデートはドライブデート。
彼女と楽しく話しながら、俺が運転している。
急いで救急患者に向かう時だけじゃなく、その場所を把握するためにこの都市の道を把握したい。
知らない交差点や知らない場所を少しでも減らしたくて時々休みの日にドライブをしていた。その練習に彼女が付き合ってくれている。
「どこか行きたい場所ある?」
「うーん。あ、テニスしませんか?」
「オッケー、テニスができるところに向かうね」
「ヤッター!」
軽やかな声が耳に入って俺も嬉しくなる。
頭の中にある地図を考えて、テニスができる場所に車を走らせた。
未知の交差点をひとつでも減らすために。
おわり
五一三、未知の交差点
数日前に、彼女の職場先でもらった一輪のコスモス。
俺たちの家には花瓶がないから、透明のグラスに水を入れて差していた。
俺たちはどちらかと言えば青系が好きなふたりだから、コスモスの色合いは珍しい。
それでも、花が部屋にあるのは心を華やかにさせてくれる。それは彼女も同じだったみたいで、切り花がどうしたら長く咲くのか調べていた。
少しずつ短くなったコスモスはしおれかけていて、少し寂しく感じる。
だから今日は帰りに一輪の花を買って帰ることにした。
――
「ただいま!」
「おかえりなさい!!」
いつものハグをした後に居間に向かうと、コスモスがキリッと背筋を伸ばして色合いが変わっていた。
俺は自然と笑みを浮かべてしまう。
「同じこと、考えてたみたいだね」
そう言いながら彼女の前に一輪のコスモスを差し出した。
おわり
五一二、一輪のコスモス
少しずつ気温が下がって、木の葉の色が褪せてきていた。
そんな色の街路樹を、俺は彼女の手を取って歩いていく。
「過ごしやすい季節になったね」
「はい!」
満面の笑みを向けてくれる愛しい彼女。
薄着の多かった時期から、軽く羽織ってくれるこの時期はちょっとだけホッとする。
彼女の視線は、横切るお店に書いてある季節の食べものに移っていた。
「何か食べる?」
「食べる!!!」
えらい食い気味な返事に笑いが込み上げてしまう。
食べ歩きができそうな季節限定のクレープをみっつ分買って公園で食べることにした。
カボチャ、栗、さつまいも。
選べなかったんだよね。俺じゃなくて彼女が。
ふたりで分けて食べていくんだけれど、口いっぱいに頬張る姿はやっぱりハムスターみたいだな。
「んん?」
俺の視線に疑問を持ったのか、無垢な瞳で俺を見つめて首をかしげる。
やっぱり食べ物を口に含んだ彼女は愛らしさが増して可愛らしい。
やっぱり、いっぱい食べる君が好き。
おわり
五一一、秋恋
俺には恋人がいます。
正直、将来も考えるくらい大切な人です。
人に気持ちを押し付けられまくった中で、彼女は俺を大切にしてくれた人。
そこから彼女を知って、どんどん知って、彼女から視線を外せなくなっていった。
いつの間にか、彼女の笑顔を見ているうちに癒されて行く自分に気がついたんだ。
恋人になった時は嬉し過ぎて舞い上がったなー。
俺の仕事に時間に余裕がなくて、まあまあ時間が取れないのと、恋人になったからこそ一緒にいたくてさ。一緒に住むのも早かったです。
ケンカ……はあまりしたことない。
怒らせることはある。
俺が俺自身を大事にしないと怒る。それはもうしっかり怒られる。
怒る理由は俺のことを愛してくれている。だから怒ると思うと嬉しくなるんだけれどさ。
彼女に怒られることも、泣かれることも俺には弱点なんだなと改めて痛感した。
俺は。
彼女の想いに応えたいから、俺自身を大切にすると決めた。
だって、彼女が泣くのも怒るのも見たくないから。
おわり
五一〇、愛する、それ故に
騒々しい都会の中で静寂を探すのは難しい。
二十四時間車の音や、人の音が溢れている。
家の中にいても時計の音や電子音なんかも聞こえてくるからね。
なにより、静寂の中心に居ても〝静寂の音〟が聞こえる。
やっぱり静寂を探すのは難しい。
寝室に戻ると、先に眠っていた恋人がタオルケットにくるまって眠っていた。
彼女の隣に横になると、すうすうと寝息が聞こえる。
ほら、静寂を探すのは難しい。
俺は自然と口角が上がる。愛しい寝息を子守唄にして瞳を閉じた。
おわり
五〇九、静寂の中心で