とある恋人たちの日常。

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 少しずつ気温が下がって、木の葉の色が褪せてきていた。
 そんな色の街路樹を、俺は彼女の手を取って歩いていく。
 
「過ごしやすい季節になったね」
「はい!」
 
 満面の笑みを向けてくれる愛しい彼女。
 薄着の多かった時期から、軽く羽織ってくれるこの時期はちょっとだけホッとする。
 
 彼女の視線は、横切るお店に書いてある季節の食べものに移っていた。
 
「何か食べる?」
「食べる!!!」
 
 えらい食い気味な返事に笑いが込み上げてしまう。
 
 食べ歩きができそうな季節限定のクレープをみっつ分買って公園で食べることにした。
 
 カボチャ、栗、さつまいも。
 選べなかったんだよね。俺じゃなくて彼女が。
 
 ふたりで分けて食べていくんだけれど、口いっぱいに頬張る姿はやっぱりハムスターみたいだな。
 
「んん?」
 
 俺の視線に疑問を持ったのか、無垢な瞳で俺を見つめて首をかしげる。
 やっぱり食べ物を口に含んだ彼女は愛らしさが増して可愛らしい。
 
 やっぱり、いっぱい食べる君が好き。
 
 
 
おわり
 
 
 
五一一、秋恋
 
 
 

10/9/2025, 1:51:40 PM