数日前に、彼女の職場先でもらった一輪のコスモス。
俺たちの家には花瓶がないから、透明のグラスに水を入れて差していた。
俺たちはどちらかと言えば青系が好きなふたりだから、コスモスの色合いは珍しい。
それでも、花が部屋にあるのは心を華やかにさせてくれる。それは彼女も同じだったみたいで、切り花がどうしたら長く咲くのか調べていた。
少しずつ短くなったコスモスはしおれかけていて、少し寂しく感じる。
だから今日は帰りに一輪の花を買って帰ることにした。
――
「ただいま!」
「おかえりなさい!!」
いつものハグをした後に居間に向かうと、コスモスがキリッと背筋を伸ばして色合いが変わっていた。
俺は自然と笑みを浮かべてしまう。
「同じこと、考えてたみたいだね」
そう言いながら彼女の前に一輪のコスモスを差し出した。
おわり
五一二、一輪のコスモス
10/10/2025, 1:20:48 PM