とある恋人たちの日常。

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10/7/2025, 12:50:29 PM

 
 騒々しい都会の中で静寂を探すのは難しい。
 二十四時間車の音や、人の音が溢れている。
 家の中にいても時計の音や電子音なんかも聞こえてくるからね。
 なにより、静寂の中心に居ても〝静寂の音〟が聞こえる。
 
 やっぱり静寂を探すのは難しい。
 
 寝室に戻ると、先に眠っていた恋人がタオルケットにくるまって眠っていた。
 
 彼女の隣に横になると、すうすうと寝息が聞こえる。
 
 ほら、静寂を探すのは難しい。
 
 俺は自然と口角が上がる。愛しい寝息を子守唄にして瞳を閉じた。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇九、静寂の中心で
 
 
 

10/6/2025, 2:04:36 PM

 
 最高気温が少し前に比べてグッと下がり、すっかり秋めいてきていると思った。
 
「涼しくなりましたね」
「そうだねぇ」
 
 俺は隣に並んでいる恋人の手を取る。
 彼女は一瞬驚きはするけれど、柔らかい笑みを向けてくれた。
 
「手を繋いでも問題ない季節になってきたね」
「はい」
 
 ふたり、足を止めて空を見上げ、涼しさに色を変えてきた葉っぱを見つめた。
 
「本当に秋めいてきたねぇ」
「はい。赤い葉っぱになりますかねぇ」
「なるといいねぇ。そうしたら葉っぱ集めて焼き芋作ってみたいねぇ」
「焼き芋!!」
 
 目がキラキラしている。
 うーん、食欲の権化。それが可愛いから全力で頷いちゃう。
 
 まあ、実際に紅葉を集めて焚き火と焼き芋をするのはこの都心部だと難しい気はするけれど。キャンプなら行けるかな。
 
 そうか、キャンプか……。
 
「どうしましたか?」
 
 俺が固まっていたからか、彼女が不安そうな顔をして俺を見つめてきた。
 
「ううん。焚き火で焼き芋を作れるところ、今度探して行こうね」
「はい!」
 
 赤く萌える葉を見つめて、それを集めてのんびり過ごす。そんな秋もいいかもしれないな。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇八、燃える葉
 
 
 

10/5/2025, 1:43:45 PM

 
 すやすやと眠りについた恋人。
 今日はよっぽど心に引っかかるものがあったのかな。
 俺の身体に後ろからしがみついて離してくれなくなった。
 その彼女の手がベッドの上に彼女の手がパタリと落ちる。
 
 眠ったのかな?
 
 彼女が起きないように静かに身体を起こす。
 彼女の方に視線を送ると閉じた瞳が赤くなっている。話していた時の声がくぐもっていたから泣いているかもと思ったけれど、やっぱりそうだったみたい。
 
 カーテンの隙間から光が差し込み、綺麗なんだけれど痛々しさが見える。
 
 何でこんな感じになったかは分からないんだけれど、でも分かるんだ。
 
 俺のことを抱きしめて離さずに泣くなんて本当に。
 
「俺のことが好きだよね」
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇七、moonlight
 
 
 

10/4/2025, 1:05:15 PM

 
 ダブルベットに横になった私と恋人。
 私は彼の身体を後ろからぎゅっと抱きしめる。
 
「うお!?」
 
 腕だけじゃなくて足も使って彼を……ほとんど捕縛に近い。
 
「え。俺、動けないよ」
「……」
 
 私は彼何も返事をしない。
 彼は何もしてないの。別に悪いことしてない。
 私のこと大切にしてくれるし、毎日帰ったらぎゅーってしてくれるし、何も悪くない。
 ただ耳にしただけなの。彼のことを格好良いと言う女の子たちの言葉を。
 
 それで私の心が少しささくれてしまっただけ。
 
「ねえ、せめて俺もそっち向かせて」
 
 なだめるような優しい声。
 
「だめです」
 
 でも、私は鼻がつまったくぐもった声でそう答える。
 今日はだめ。
 
「今日だけは許してください」
 
 多分ね。
 今あなたの顔を見たら、いっぱい泣いちゃう。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇六、今日だけ許して
 
 
 

10/3/2025, 1:28:17 PM

 
 ねえ、誰か。
 もうひとりはイヤだよ。
 
 私は手を伸ばす。
 そこは空をきって何も掴めない。
 
 胸の奥から悲しくて、寂しくて涙が溢れてくる。
 
 やだ、ひとりにしないで。
 お願い、誰か……。
 
「……うぶ!?」
 
 なにか聞こえたような気がして、その瞬間手が暖かくなる。
 
 誰かの声が聞こえて、私は意識を取り戻した。そこには焦った表情で私を見ている青年がいた。
 彼は私を見るとホッとした顔をする。
 
「良かった、目を覚まして。大丈夫?」
 
 その表情は私の胸に優しい明かりを灯した。
 
 ――
 
 私はひとりが怖かった。
 でも、今は平気。
 
 あの時灯った優しい明かりは強く灯っている。
 
 彼はお医者さんで、倒れた私を介抱してくれた人。私はおっちょこちょいだから、しょっちゅう彼のお世話になるうちに友達から、たったひとりだけの大切な人になっていた。
 
 彼は私のそばにいてくれる人になってくれて。
 私はもう、ひとりが怖くなくなった。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇五、誰か
 
 
 

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