とある恋人たちの日常。

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 最高気温が少し前に比べてグッと下がり、すっかり秋めいてきていると思った。
 
「涼しくなりましたね」
「そうだねぇ」
 
 俺は隣に並んでいる恋人の手を取る。
 彼女は一瞬驚きはするけれど、柔らかい笑みを向けてくれた。
 
「手を繋いでも問題ない季節になってきたね」
「はい」
 
 ふたり、足を止めて空を見上げ、涼しさに色を変えてきた葉っぱを見つめた。
 
「本当に秋めいてきたねぇ」
「はい。赤い葉っぱになりますかねぇ」
「なるといいねぇ。そうしたら葉っぱ集めて焼き芋作ってみたいねぇ」
「焼き芋!!」
 
 目がキラキラしている。
 うーん、食欲の権化。それが可愛いから全力で頷いちゃう。
 
 まあ、実際に紅葉を集めて焚き火と焼き芋をするのはこの都心部だと難しい気はするけれど。キャンプなら行けるかな。
 
 そうか、キャンプか……。
 
「どうしましたか?」
 
 俺が固まっていたからか、彼女が不安そうな顔をして俺を見つめてきた。
 
「ううん。焚き火で焼き芋を作れるところ、今度探して行こうね」
「はい!」
 
 赤く萌える葉を見つめて、それを集めてのんびり過ごす。そんな秋もいいかもしれないな。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇八、燃える葉
 
 
 

10/6/2025, 2:04:36 PM