とある恋人たちの日常。

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9/22/2025, 12:59:42 PM

 
 ほんの少し前まではカンカン照りで、強い日差しにうんざりしていた。
 
 ゲリラ豪雨も最近は減っていて、季節の移ろいを肌で感じていた。
 
 そして今日の空には分厚い雲。
 
「太陽がないのは寂しいけど、これはこれで過ごしやすいね」
 
 そう言って恋人が私に手を差し伸べてくれる。
 
 その優しい笑顔が私にとって太陽なんですよ。
 
 それを言葉にはしないけれど、嬉しくて彼の手を取って隣に立った。
 
 汗もかかないから、そばにいやすくていい季節になりました。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九四、cloudy

9/21/2025, 1:36:52 PM

 
 今、一緒に働いてくれる友人は、一度この都市を黙って居なくなった。
 ただ、居なくなるだけなら〝またね〟で済んだ。
 
 でも友達は、それすらさせてくれなくて、私の心にぽっかりと穴が空いたの。
 
 無理した笑顔で無理矢理ふさいで、見ないふりしていた。
 
 そして何ヶ月も経って初めて知る、顔見知りだった人達の訃報。
 
 ただ、お客さんで来てくれた人達だった。
 友達とは違って、近い距離の人達じゃないけれど、私にとっては印象に残った人達だったの。
 
 その時、ハリボテで塞いだ心の穴はいとも簡単に剥がれ落ち、最初の穴より一気に広がって私の心を締め付ける。
 
 それは熱い涙になって頬をつたう。
 ひとつふたつ落ちるんじゃなく、ボロボロと流れ落ちた。
 
 その涙を拭う。
 
『花を手向けに行こう』
 
 みんながそう言って花を贈る。
 
 それだけで少し心が落ち着いた。
 こうやって自分の中で一人目の人は〝区切り〟をつけられた。
 
 もう一人をどうしようかなと思っていた時。
 彼がその人のお墓を教えてくれると言ってくれた。
 
 彼と一緒にお墓参りをすることになったのだけれど、彼が手を合わせる時にその後ろにいた。
 
 ただ彼の背中を見た時に、何か違うものを感じたの。
 
 振り返った時に笑顔でいてくれたけれど、目尻に赤いものや、いつもとは違う表情の固さを感じた。
 
 亡くなる時も近くにいたと聞いた。
 もしかしたら、少し特別な関係の人だったのかな。
 
 みんながお墓から離れていく中、私はもう一度お墓を見つめ直す。
 
 虹の架け橋を渡ってしまったけれど、私でよければ彼のそばにいたいです。と、お墓のお客さんに願ってしまった。
 
 後にその人が、彼にとって兄のように慕っていた人と聞いた。
 
 恋人になった彼のそばにずっといようと、改めて誓った。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九三、虹の架け橋

9/20/2025, 1:11:18 PM

 
 少しくらいなら気にしないんだけれど、ちょっと……気になっちゃう、な。
 
 私の恋人は救急隊員で人を助ける仕事をしている。ただ、その中には危険な救助もある。
 大型の事件や事故があれば気軽にメッセージなんて見られない。
 だから簡単に既読がつかないことは理解しているんだけれど……。
 
 もう半日はつかない。
 
 心にゾクリと冷たいものが落ちる。
 
 こわい。
 色々な悪い予感が交差して身体が震えだした。
 
 こわいよ。
 あなたに何かあったのか、怖くて不安でソファに座って自分の身体を抑えることしか出来ない。
 
 彼がいなくなることなんて、私に耐えられそうにない。
 
 俯いたところでパッと光が視界に入った。
 いつの間にかに日が暮れていて照明も付けずに部屋は真っ暗になっていたことに気がつく。
 
 私はスマホに手を伸ばして画面を見る。
 力が抜けた。
 
『遅くなってごめん。すぐ帰るね!』
 
 たったそれだけ。
 全身から力が抜けて胸の奥から熱いものが溢れて、視界が揺れる。
 
「よかったぁ……」
 
 それだけしか言えなかった。
 
 ひとしきりに泣いたあと、慌てて彼に返事を送る。
 今度はきっと、彼の方が既読のつかないメッセージに慌てていたと思うから。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九二、既読のつかないメッセージ

9/19/2025, 1:07:41 PM

 
「暑いねぇ」
「暑いですねぇ」
 
 今年何回したか分からないほど繰り返した会話をもう一度する。
 だらりと汗が流れ落ちて、この暑さに嫌気がさす。
 
 その時に流れるふわりとした風。いつもと違うものを感じた。
 
 ただベタっとしただけの不快感マックスの空気じゃなくて、その中に湿度が下がったようで。
 〝秋〟とまでは言わなくても、夏が終わりかけていると感じられた。
 
「暑いには暑いですけど、なんかピークは過ぎたってん感じますね」
 
 何気なく呟いた恋人の言葉に俺は驚いた。
 
「俺も、俺もそう思った!」
 
 彼女は柔らかく微笑んで手を差し伸べてくれる。俺はその手を取った。
 
「同じことを考えたんだね」
「はい!」
 
 そんな話をしながら、買い物に行ったスーパーではすっかりハロウィン色に染まっていて、季節は秋になっていなくても全力の秋が正面からやってきていた。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九一、秋色
 

9/18/2025, 2:12:22 PM

 
 何気ない話だった。
 職場で談笑しながら出てきた話題に〝もしも世界が終わるなら〟というものがあった。
 
 他愛のない話しとして笑いながら話し合っていたけれど、私の胸はズキンズキンと痛くなっていた。
 
 もしも世界が終わる時、それが災害であれば私は大好きな彼と一緒には居られないと思ったから。
 彼は救急隊員だから、きっと人を助けるために走り回っているだろうな。
 
 私は……それでもいいと思っていたんだ。
 彼が危険な仕事をしているのは理解している。人を助ける彼は誰よりも格好いいもの。
 
 それを止めるような人間でいたくない。
 彼の仕事を理解したいもの。
 
 でも、でもね。
 私のそばにいてと言いたい自分だっているの。
 
 もしも世界が終わるなら。
 彼と一緒にいたい。
 
 だって、彼がいない世界に耐えられそうにないもの。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九〇、もしも世界が終わるなら

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