とある恋人たちの日常。

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「暑いねぇ」
「暑いですねぇ」
 
 今年何回したか分からないほど繰り返した会話をもう一度する。
 だらりと汗が流れ落ちて、この暑さに嫌気がさす。
 
 その時に流れるふわりとした風。いつもと違うものを感じた。
 
 ただベタっとしただけの不快感マックスの空気じゃなくて、その中に湿度が下がったようで。
 〝秋〟とまでは言わなくても、夏が終わりかけていると感じられた。
 
「暑いには暑いですけど、なんかピークは過ぎたってん感じますね」
 
 何気なく呟いた恋人の言葉に俺は驚いた。
 
「俺も、俺もそう思った!」
 
 彼女は柔らかく微笑んで手を差し伸べてくれる。俺はその手を取った。
 
「同じことを考えたんだね」
「はい!」
 
 そんな話をしながら、買い物に行ったスーパーではすっかりハロウィン色に染まっていて、季節は秋になっていなくても全力の秋が正面からやってきていた。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九一、秋色
 

9/19/2025, 1:07:41 PM