とある恋人たちの日常。

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 今、一緒に働いてくれる友人は、一度この都市を黙って居なくなった。
 ただ、居なくなるだけなら〝またね〟で済んだ。
 
 でも友達は、それすらさせてくれなくて、私の心にぽっかりと穴が空いたの。
 
 無理した笑顔で無理矢理ふさいで、見ないふりしていた。
 
 そして何ヶ月も経って初めて知る、顔見知りだった人達の訃報。
 
 ただ、お客さんで来てくれた人達だった。
 友達とは違って、近い距離の人達じゃないけれど、私にとっては印象に残った人達だったの。
 
 その時、ハリボテで塞いだ心の穴はいとも簡単に剥がれ落ち、最初の穴より一気に広がって私の心を締め付ける。
 
 それは熱い涙になって頬をつたう。
 ひとつふたつ落ちるんじゃなく、ボロボロと流れ落ちた。
 
 その涙を拭う。
 
『花を手向けに行こう』
 
 みんながそう言って花を贈る。
 
 それだけで少し心が落ち着いた。
 こうやって自分の中で一人目の人は〝区切り〟をつけられた。
 
 もう一人をどうしようかなと思っていた時。
 彼がその人のお墓を教えてくれると言ってくれた。
 
 彼と一緒にお墓参りをすることになったのだけれど、彼が手を合わせる時にその後ろにいた。
 
 ただ彼の背中を見た時に、何か違うものを感じたの。
 
 振り返った時に笑顔でいてくれたけれど、目尻に赤いものや、いつもとは違う表情の固さを感じた。
 
 亡くなる時も近くにいたと聞いた。
 もしかしたら、少し特別な関係の人だったのかな。
 
 みんながお墓から離れていく中、私はもう一度お墓を見つめ直す。
 
 虹の架け橋を渡ってしまったけれど、私でよければ彼のそばにいたいです。と、お墓のお客さんに願ってしまった。
 
 後にその人が、彼にとって兄のように慕っていた人と聞いた。
 
 恋人になった彼のそばにずっといようと、改めて誓った。
 
 
 
おわり
 
 
 
四九三、虹の架け橋

9/21/2025, 1:36:52 PM