へたばっていた恋人がようやく身体を起こせるようになったみたいで、ベッドにタオルケットの山が出来上がっていた。
「大丈夫?」
「うぅ、だいじょぶですぅ〜」
なんとも気の抜けた声だけれど、台風が通過していた時は頭痛と怠さで唸るのが精一杯だったみたいだから少しだけ安心した。
「暖かいスープ、作ろうか?」
そう伝えながらベッドの山の隣に座り寄り添う。すると彼女からも体重がかかって嬉しい。元々は気遣い屋さんの彼女が〝当たり前〟のように甘えてくれるようになっているんだから。
タオルケットの隙間から白い手が伸びて俺の腰に回される。
「んーん」
言葉と共にきゅっと抱き締められた。胸に彼女の額がすり寄せられる。それが嬉しくて胸が暖かい。
「そばにいればいい?」
「んっ!」
今までになく力強い声に安心して、俺からも彼女を優しく抱きしめた。
おわり
四八四、台風が過ぎ去って
目を覚ますと恋人が腕の中に収まっていて安心してしまう。
無防備な表情で眠っている彼女をどうしようもなく愛おしいと感じてしまい、起こさないように抱きしめた。
温かくて愛おしさが増す。
この都市に来たばかりの時には、こんなふうに大切な人ができるなんて思わなかった。
あの時はひとりきりで、色々迷っていた。
何をしていきたいかは分かっていなかったけれど、みんなの背中を支えられるようになりたかったんだ。
今の俺はひとりじゃない。
彼女とはいつか家族になれたらとこっそり思っている。
この都市に来て、それくらい願う人に出会えたんだ。
もう、ひとり戻れそうにない。
おわり
四八三、ひとりきり
俺と恋人はクリームソーダを作っていた。
彼女と仲良くなるきっかけはクリームソーダだから、この時間を大切にしている。
今日はちょっと凝ってみようと色々用意してみた。
俺のはいちごシロップを使った赤い炭酸で作る。バニラアイスはホワイトチョコで型どった細長い丸をふたつ刺す。
うさぎが乗った、いちごのクリームソーダの完成!
彼女は彼女で、好きな青色のラムネ味のシロップを使ってクリームソーダを作る。
アイスクリームには小さい丸いチョコレートを使ってパンダの形にしていた。
ふたつ耳として刺し、目のところに置くだけで結構パンダに見えるのは凄いなー。
これでパンダが乗ったラムネ味のクリームソーダの完成。
普段は気軽にメロンソーダで作るけれど、たまには凝ったクリームソーダを作るのも楽しいよね。
おわり
四八二、Red,Green,Blue
俺の恋人は、幼さが残る中に大人っぽさもある人。
可愛いし、おっちょこちょいなところも愛らしさが溢れていると思うんだ。
それに細かいところまで気が利くから、空気も読める。読めないふりもするけれど、そこも分かるからこそなんだよね。
何気ない一言がドキッとするんだ。
本人の幼さとは裏腹に、結構ね……こう、なんと言うか出るところは出て、引き締まるところは引き締まっているから大変ナイスバディと言うやつで。
無邪気さにそういうところが隠れてしまうけれど、恋人としては毎日のようにハラハラしています。
それをこっそり先輩に相談する。
「いい子だけど、そんなに心配しなくても大丈夫だと思うぞ」
そうは言いますが、恋人としては心配なんです。
おわり
四八一、フィルター
恋人も私も職場の人達は特別だ。
この都市に来て、独りだった私を雇ってくれた社長達には感謝しかない。
社長は私を娘のように大切にしてくれる。だから私も家族のように思っていた。
恋人ができた時も喜んでくれた。
それは同じ時期にこの都市に来た彼も同じような経験をしていたみたい。
家族のように大切だって言っていた。
だから、彼の師匠にあたる人にも紹介してくれた時は、家族に紹介してくれるようだった。
お互い職場の仲間たちには、それぞれの絆があって、間に入れるものではない。
でも、彼と私にはふたりだけの絆もそこにある。
おわり
四八〇、仲間になれなくて