熱帯夜が続く日々。
熱中症対策に冷房を付けて眠っている。
こっそり恋人の温もりを感じたくて、ほんの少しだけ下げさせてもらってる。もちろん本当に寒くなるほど下げてはいないけれどね。
眠っている彼女を後ろから抱きしめる。
すやすやと眠っていて、俺が抱きしめても反応せず、呼吸に合わせて身体を上下させていた。
起こしたくないから、これ以上変なことはしないけれど彼女の体温はどうしようもなく安心感を覚える。
「ん……」
彼女が俺の腕を掴んでぎゅうっと抱きしめてから、また眠りに落ちた。
胸の奥から熱いものが溢れて、どうにも言葉にできなかった。
おわり
四五四、言葉にならないもの
ジリジリと熱が差し込み、汗が流れ落ちる。
暑いのは嫌いじゃないけれど、嫌な季節だ。
俺の恋人は幼さの残る表情、屈託のない人懐っこい性格と合わさってとても愛らしい。
客商売をしているから割と本気で片思いしている人もいた。なんなら付き合った時に「彼女を泣かせたら許さない」と怖い人たちに囲まれたこともある。
いや、泣かせる気は無いよ。
積み重なった想いを消せなくなって、ようやく付き合えたんだよ。
でもさ、ノースリーブだったり、水着だったり、薄手の白いシャツを着るのは本当にやめて欲しい。
暑ければ暑いほど薄着になり、彼女へ不謹慎な視線が向けられているの知っているし、追っ払ったことだって何度もあるんだ。
あー、どこかに閉じ込めたいー。
そんな真夏の記憶。
おわり
四五三、真夏の記憶
しゅわしゅわしゅわしゅわと、緑色の炭酸が音を立ててぱちぱちと水が跳ねる。
恋人と私が大好きな飲み物をこれから作ります。
我が家には好きだからこそ、専用グラスに専用の細長いスプーンも用意してある。準備万端なのだ。
バニラアイスを乗せると出来上がる宝石のような飲みものが出来上がる。
アイスを乗せるのに少しだけ待たせただけなのに、グラスからは水滴が落ちていた。それがよりキラキラした宝石を思わせてくれた。
「おいしそうだねぇ!!」
「今日のはちょっとお高いバニラアイスを使いますよー!」
メロンソーダに浮かんだいくつかの氷の上にポンとバニラアイスを乗せてから、サクランボを添える。
「完成です、めしあがれー!」
「やったー!」
彼は両手を上げてはしゃぐ彼を見ていると、胸があったくなる。
彼はストローをさして、ひと口含む。
ストローの下から色が変わり、彼の唇に流れ喉が動いてそれがとてもセクシーだなと思ってしまう。
私の視線に気がついたのか、私を見つめて首を傾げた。
「どうしたの?」
「おいしかったかなって……」
「おいしいよ。あ、でもアイスを堪能するのはこれからだけどね」
話しながらスプーンでアイスをひとすくいしてパクリと味わう。パッと目が輝いているのがわかる。
そう。
今回のアイスは奮発したのです。
とは言え、先日会社で話題になってみんなで食べたアイス。それがとても美味しくて、彼に食べて欲しかったんだ。
「なにこれ、おいしいっ!」
「ですよね!」
アイスを少しだけ寄せてメロンソーダに軽く溶かしてから食べると身体を悶絶させていた。
「おいし……あ、もしかして、少しメロンシロップを濃くした?」
「あ、気が付きました? でも、少しだけですよ」
それを伝えると彼が太陽のような笑みを浮かべる。私の大好きな笑顔だからドキドキして自分のクリームソーダを勢いよくかき混ぜてしまった。
「あっ!」
「え?」
勢いがよ過ぎて、溶けたアイスがグラスからこぼれ落ちた。
まるで私のドキドキが溢れてしまったようだった。
おわり
四五二、こぼれたアイスクリーム
私の恋人はとにかく優しい人。
出会いのきっかけはお仕事だったけれど、その後に偶然会えて嬉しかったの。
見つけると、「こんにちは!」って声掛けてくれたり、私のうっかりを叱るのじゃなくて、注意してくれても「もー君なら許す!」って言ってくれたり。
そんなことを積み重ねて、〝大好き〟な想いが止められなくなった。
彼はお医者さんだから、優しさが爆発しているの。
お仕事も彼の性格も、そういう人だって分かっているんだよ。
だってそこも好きなんだもん。
時々優しさなんてどこかへ飛んで行けと思ったりしちゃう時がある。
その優しさは私だけに向けて欲しいの。
だって彼は私の恋人なんだもん。
おわり
四五一、やさしさなんて
ドキドキした。
やっと、やっと自分の気持ちを認めて、それを言葉にしたんだ。
表情を強ばらせていた彼女の瞳がきらりと光り、涙が溢れ落ちた。
その姿に背中から冷や汗が流れる。
俺の気持ちは迷惑だったのかな。
普段なら彼女に自分の気持ちを押し付けるようなことはしたくなかった。
でも、彼女を本気で狙う人が増えて、自分の気持ちを自覚した俺にとってその痛みに耐えられそうにない。
だから、申し訳ない気持ちはあれど勇気を振り絞ったんだ。
溢れる涙を拭うこともなく、彼女は優しく笑ってくれた。
その瞬間、彼女の背中から風が通り抜けて髪の毛を揺らす。短いけれど柔らかい髪がふわりと踊り、胸が高鳴った。
「私も、大好き」
誰よりもキレイだと思った。
この笑顔も、この涙も。
全部がキレイで、俺の心を捉えて離してくれそうもない。
彼女の身体が俺の胸の中に収まる。彼女の腕が背中に回され、彼女の温もりが安心感を与えてくれた。だから、俺も彼女を抱き締めた。
おわり
四五〇、風を感じて