俺がこの都市に来なければ、どうなっていたんだろう。
もしも君がこの都市に来なければ、どんな未来だったのだろう。
「ばぁぱ」
どすんとお腹に重さが加わる。深く入らなかったからまだ良かった。入ってたら悶絶していたな。
お腹には俺の……俺たちの天使の大きな瞳が俺を捉えていた。
愛しい彼女がこの都市に来ていなかったら。
俺がこの都市に来ていなかったら。
この愛らしい天使とは出会えていないんだ。
「ぱぁぱ?」
俺があまり反応しなかったからか、天使が不思議そうな顔をして首をかしげている。
俺は天使の身体を抱き寄せてから、頬寄せてグリグリと頬ずりした。
「きゃあっ」
キャッキャと楽しそうに笑い声をあげてくれる。
ああ、本当に可愛い。
「どうかしましたか?」
愛しい彼女が三人分の飲み物をトレーに乗せて持って来てくれると、お腹に乗っていた天使が身体を起こして彼女の元へ向かってしまった。
ああ、こんな気軽に離れられちゃうと、パパは寂しいですよー。
彼女はテーブルに飲み物を置くと、天使を抱きしめる。
もしも……なんて、考えること自体意味がないな。
俺は愛しい家族を見守りながら、そんなことを考えた。
おわり
三九四、もしも君が
愛おしい君の声が聞こえる。
その声をもっと聴きたくて、俺はゆっくりと目を開いた。
彼女は俺が起きたことに気がつかないから、彼女のメロディは終わらない。
俺の知らない曲。
でも彼女の優しい歌声は、心地好くて、穏やかで、やっぱり愛おしいんだ。
俺はこのまま彼女の声を聴きたくて瞳を閉じて、自然と彼女の手に自分の手を重ねた。
彼女はピクリと動き、歌声も止まる。
俺は特に動くこともなく、歌声が再開されることを待った。
「ふふ」
彼女が小さく笑った……のかな。
しばらくすると、もう片方の手が俺の手に乗せられ、ゆっくりと撫でられる。
そして、また優しい歌声が奏でられた。
愛おしい歌声と彼女の温もりが心地好くて、俺はもう一度眠りについた。
おわり
三九三、君だけのメロディ
赤ちゃんって凄いって思うし、奇跡だって思うんだ。
しかも愛した女性と自分の遺伝子がはっきり分かるの、やっぱり奇跡だよね。
なにより可愛い。
赤ちゃん特有のムチムチ感に、まあるいフォルムは愛らしさ全開。うちの子は天使だと思う。
コロコロしているのも可愛いし、しかめっ面していても可愛い。何しても可愛いと思うのは……人として心配になるな。
育休を貰って愛しい奥さんと奮闘はしているんだけど、それがもう幸せ。
寝不足は大変だし辛い時もあるけれど、それでも全部が愛おしい時間。
寝転がっただけでも、凄いとふたりで拍手喝采だった。愛しい天使はよく分かってなさそうだけれど、いいんです。全てが満点です。
今は天使に全力投球だけど、天使が眠った時にだけできる奥さんの独り占めも大事です。
「早い話、俺は家族を愛してるんだよなぁ」
そんなことを零すと彼女も、天使も笑ってくれた。
ああ、俺は幸せものです。
おわり
三九二、I love
雨がたくさん降っていて、身体が重くて頭も痛い。
これはきっと気圧だなー。
答え合わせをするように私はスマホのアプリを開くと爆弾マークが連なっていた。
肩を落としてソファに転がっていると恋人がマグカップを差し出してくれる。
「大丈夫?」
「だいじょぶじゃありません〜」
マグカップを受け取りながら返事をすると苦笑いしながら彼の手が私の頭に軽く添えられる。優しく撫でられて心地好い。
私が猫なら喉をゴロゴロ鳴らしているところだ。それも多分、かなり大きい声で。
だって彼の温もりは気持ちいいんだもーん。
私は彼の身体に体重を乗せる。すると頭にあった手が肩に添えられ抱き寄せられた。
彼の温もりは私に安らぎをくれる。
ああ、大好き。
いつもなら暑いかもしれないけれど、今日は雨のおかげか気温は下がっていて今くらいがちょうどいい。
瞳を閉じて彼に身をゆだねていると、雨が音楽を奏で始めた。
おわり
三九一、雨音に包まれて
好きな人が出来ました。
誰にでも優しくて、太陽のようなキラキラした笑顔が素敵で、どうしようもなく目を奪われてしまう。
でも、私以外にも同じように思った人が……多分いるんだろうな。
だって誰の心の中にスルッと入って、「困ったことはない?」って聞いてくれるんだよ。
人懐っこくて幼さを残す表情は心の壁を簡単に壊しちゃうんたから!
ある時、彼が女の子と二人きりで楽しそうに話していたところを見てしまった。
友達かもしれないのに胸がチクチクして痛い。
彼の気持ちは分からないけれど、女の子の瞳に私と同じ気持ちが入っているのが分かる。
それが余計に胸をえぐった。
見なかったことにして仕事に戻る。
心に刺さる棘を見ないふりして仕事を進めるけれど、うまく笑えていたかな?
いつも楽しい仕事が少しつらいし、周りの景色の色がモノクロに見えてしまう。
こんなの私らしくない。さすがに切り替えなきゃ。
そんなことを考えて拳をギュッと握って周りを見た時に見慣れた車がお店に来て私の前に止まった。
「ごめん、修理お願いできる?」
そうやって出てきたのは想いを寄せている彼だった。
ああ、やっぱり好きだな。
そんなことを思いながら彼を見つめていると不思議そうな顔をされる。
「お願いしても、平気?」
「あ、はい。すみません!」
「良かった!」
私は慌てて彼の車を修理が出来るスペースに案内した。
「良かった、君が店にいてくれて」
「え、どうしてですか?」
「だって、君は俺の専属メカニックだと思ってるから!」
ニカッと歯を見せて笑ってくれる彼の表情は、やっぱり太陽のようなキラキラした笑顔で。男性なのに綺麗で私の胸を高鳴らせる。
やっぱり、私は彼が好きだな。
おわり
三九〇、美しい