とある恋人たちの日常。

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 好きな人が出来ました。
 
 誰にでも優しくて、太陽のようなキラキラした笑顔が素敵で、どうしようもなく目を奪われてしまう。
 
 でも、私以外にも同じように思った人が……多分いるんだろうな。
 
 だって誰の心の中にスルッと入って、「困ったことはない?」って聞いてくれるんだよ。
 人懐っこくて幼さを残す表情は心の壁を簡単に壊しちゃうんたから!
 
 ある時、彼が女の子と二人きりで楽しそうに話していたところを見てしまった。
 友達かもしれないのに胸がチクチクして痛い。
 彼の気持ちは分からないけれど、女の子の瞳に私と同じ気持ちが入っているのが分かる。
 それが余計に胸をえぐった。
 
 見なかったことにして仕事に戻る。
 心に刺さる棘を見ないふりして仕事を進めるけれど、うまく笑えていたかな?
 
 いつも楽しい仕事が少しつらいし、周りの景色の色がモノクロに見えてしまう。
 
 こんなの私らしくない。さすがに切り替えなきゃ。
 
 そんなことを考えて拳をギュッと握って周りを見た時に見慣れた車がお店に来て私の前に止まった。
 
「ごめん、修理お願いできる?」
 
 そうやって出てきたのは想いを寄せている彼だった。
 
 ああ、やっぱり好きだな。
 
 そんなことを思いながら彼を見つめていると不思議そうな顔をされる。
 
「お願いしても、平気?」
「あ、はい。すみません!」
「良かった!」
 
 私は慌てて彼の車を修理が出来るスペースに案内した。
 
「良かった、君が店にいてくれて」
「え、どうしてですか?」
「だって、君は俺の専属メカニックだと思ってるから!」
 
 ニカッと歯を見せて笑ってくれる彼の表情は、やっぱり太陽のようなキラキラした笑顔で。男性なのに綺麗で私の胸を高鳴らせる。
 
 やっぱり、私は彼が好きだな。
 
 
 
おわり
 
 
 
三九〇、美しい

6/10/2025, 1:53:24 PM