この前美容院に行ったんだけれど、その時の美容院で使ってもらったシャンプーがあまりにも心地よくて思わず買ってしまった。
美容師さんからシャンプーの仕方から教えてもらって使ってみたら、やっぱり髪の毛がさらっさらになったの!
自分の髪の毛だけれど、触り心地良くて気持ちいい!!
シャンプーはもちろんだけれど、ドライヤーもスタイリング剤も大切なの。
この辺りは忘れそうと伝えたら、配信で教えてくれる動画も用意してくれていて、やってみたら本当にさらっさら!
当然、美容師さんほどって訳じゃないけれど、それでも違いがハッキリ分かるんだから凄いよね。
そんな感じで、上機嫌でいつものおかえりなさいのハグを恋人にすると、彼が頭を撫でてくれた。
それがいつもの撫で方じゃなくて、ずーっと撫でてくれる。
「ど、どうしましたか?」
「あ、ごめん。髪の毛、気持ち良くて……」
ほんの少しだけ、彼が頬を染めてそう言ってくれたから、結構高いし手間もかかっているけれど、頑張って良かった。
おわり
三七七、さらさら
「ふふふ〜」
ソファに座ってニヤニヤしていると、恋人が呆れた顔して私を見てくる。
「どうしたの、ニヤニヤして」
頬が緩んで引き締まらなくて、ずーっとニヤニヤが止まらない。
「だって嬉しいんだもん」
難しい書類を間違えずに書いて、大切な人達にお願いをして書いてもらって準備は万端!!
明日はこの書類を役所に提出する。
「そんなに嬉しい?」
そんな彼も嬉しそうに見えて、私の頬は更に緩んでしまう。
えへへ。
彼は私の頬を下から優しく持ち上げて、もにゅもにゅと顔をいじくる。
「ふにゃー」
「だって緩みすぎだよ」
「ふれしひの!」
頬から手を離して、ゆっくりと私を抱きしめてくれた。
明日、私は彼のお嫁さんになります。
大好きな苗字だけれど、この苗字は今日で……これで最後。
おわり
三七六、これで最後
俺、名前の呼び捨てってあまり得意じゃないんだよね。だから、あだ名を付けさせてもらって、あだ名で呼ばせてもらってる。
そんな中で、たったひとりだけ。
あだ名で呼べない人がいる。
あだ名で呼ぼうとは思ったんだよ。
でも、なんか違うって思っちゃって呼べなかったんだよね。
それとなく、彼女に呼び方を変えつつあだ名で呼んでもらおうかなって思ったけれど、それも上手くいかなかった。
彼女が俺の名前を呼ぶ。
それが嬉しくて、胸が温かい。
俺も彼女の名前を呼ぶ。
その声に、眩い笑顔を見せてくれる彼女を見ていると胸が苦しい。でもそれが嬉しくて愛おしいんだ。
おわり
三七五、君の名前を呼んだ日
ちょっと身体がダルくてウトウトとテーブルに突っ伏していた。
肩首が痛いのと重いのと、少し苦しいのと。
昨日はしっかり休んだし、出かける前に彼を構い倒したから精神的に落ち込んでいるという訳じゃないんだけれど。
「なんでだろう」
そんなことを思いながらスマホで気圧予報のアプリを覗くと爆弾マークが付いていた。
ああ、これだ。
この後、もっと雨が降るのかな。
天気予報を見ようと思ったのだけど、もういいや。
そんなことを考えながら目を閉じて意識を手放した。
しとしとと、やさしい雨音が聞こえて心地いい。
目を開けるとベッドで横になっていた。重い身体を何とか起こしてもう一度瞳を閉じると雨の音がやさしくて、耳だけは心地いい。
そう、耳だけね。身体がもっと重くて、あのテーブルで眠ったままなら、どうなっていたのかな。
ガチャリと扉が開き、愛しい彼が私を見つめる。
「起きてたんだ。大丈夫?」
そばに近づいてベッドに腰掛けてから私の身体を包み込む。彼の温もりが温かくて安心した。
彼はなにも言わずに、ただ抱きしめてくれる。
ああ、愛おしくて、落ち着く。
おわり
三七四、やさしい雨音
お腹すいたなぁ。
今日はお休みなので、彼と夜更かしをしたから目を覚ましたら時計の針が両方上を向いていた。
いっぱい眠ったなあ。
身体を伸ばしながらダイニングに向かうと、彼が歌を歌いながら楽しそうにご飯を作っていた。
私の気配に気が付かないみたいで、私に振り向くことはない。
そのまま彼に視線を向けていると、ティーシャツから透けて見える彼の肉体がなんとも……セクシーだなって思う。
顔や仕草は幼く見える方だし、太陽のような笑顔や明るさもそれに拍車をかけていて見落としがちなんだけれど。
彼の本職は救急隊で基本的に身体を鍛えている。だから、ふとした瞬間に大人っぽさと艶やかさを気づかせた。
私の恋人は格好いいな。
歌いながらリズミカルにフライパンを軽々動かしてくるんと振り返る。
「うわっ!!!」
「あ、おはようございます」
「起きていたんだ、おはよ」
彼はフライパンを持ったまま、びっくりして動きが止まったけれど、すぐに見慣れた笑顔を私に向けてくれた。だからつられて笑顔になる。
ああ、やっぱり彼が大好き。
「そう言えば、今日は機嫌良いですね」
「え、なんでそう思うの?」
彼は作っていたお料理をお皿に乗せながら、私の前には美味しそうな湯気を揺らした食事が彼の手で並べられていく。
「歌を歌っているの、めずらしい」
ガタンガタンガタンッ!!
言ってる途中から彼が椅子から転がり落ちた。私もびっくりして立ち上がると真っ赤になった彼が私を見上げていた。
「聞いてたの!?」
「え、ダメでした?」
「忘れて!!!」
彼がこんなに顔を赤くすることがないから、私は面食らってしまう。わ、耳まで真っ赤だ。
「えー、忘れたくなぁい」
「ダメッ、忘れて!」
「ヘタじゃないのになんでですか!?」
「忘れて!!」
ほんのり涙目になっている。きっと本当に嫌なんだと思うんだけど、とても可愛い。
いじわるしたくなる気持ちを抑えて私は彼の前にしゃがみこむ。唇をとがらせて見上げている顔はより幼さを強調して可愛い。
可愛いけれど、これ以上やったら怒っちゃいそうだからここまで。
「はぁい、忘れます」
彼を困らせたくないから、本当に嫌なことだと分かったから、この件は心の中にしまっておく。
私の思いの理解した彼は安心したように笑う。
何事も無かったように手を伸ばすと、その手を取ってくれて、引っ張りながら立ち上がらせた。
「ありがとう」
今は胸にしまっておくけれど、いつか心のトゲが取れたら、今度はちゃんと聞かせて欲しいな。
おわり
三七三、歌