だいすきなママがつれていってくれた、まっしろなところ。
ママがはなしていたひとにだっこされたとき、さみしくて、かなしくて、なみだがとまらなくなった。
「わあああ、ごめんねぇ!!!」
「やっぱりダメかー!」
ママにぎゅっとしてもらって、あんしんしてなみだがとまる。
とおいところから、「出っ勤!!」とおおきいこえのおにいさんがきた。
「え? 子供?」
おにいさんはびっくりしていたけれど、うーんってしてから、にっこりしてくれた。
そして、みどりいろののみものに、バニラアイスがのっているのみものをくれた。
「クリームソーダだよ〜、飲む?」
おにいさんのめはやさしくて、ママとおなじくらいあったかいきもちになる。
わたしはうなずくと、のみものにてをのばした。
ママがわたしをだっこしてくれたけれど、おひざにのせてくれた。するとおにいさんは、わたしのめのまえにすわってくれた。
「クリームソーダ、好きなの?」
やさしいこえのおにいさん。
わたしはそうだよっていいたくて、うんうんってする。おにいさんは、みどりののみものをゆっくりとのませてくれる。
「!!」
しゅわしゅわ!
あまくてほっぺがとけそう!
うれしくて、のみものをのんでいると、おにいさんはバニラアイスをスプーンにのせてもってきてくれる。
おにいさんのおかおがやさしくて、おいしいってわかるから、あーんした。
おにいさんはだれ?
ママじゃないのにポカポカするの。
のみおわると、ママはわたしをおにいさんにむける。こんどはおにいさんがだっこしてくれた。
おにいさん、あったかい。
ポカポカする、おにいさんはだぁれ?
はじめてママじゃないのに、あったかいの。
――
うっすらと、残るか残らないかの記憶。
考えると現実味のないファンタジーの奇跡。
心がポカポカするお兄さんは今、私の大切な人でした。
おわり
二七九、あなたは誰
手紙……というほどではないけれど。
私は適当な紙に、思っていたことを書き出した。
ぼんやりしては書いて、書いてはぼんやりして。
考えて書くことじゃなく、その時に思いついたことを、思いついた気持ちをひたすらに書きつづった。
最後の一文を見つめると胸が締め付けられてしまう。
〝彼が好き〟
そんな単純な言葉。
最初から読み直すと、読んでいる途中から顔が熱くなる。
これじゃ、ただの熱烈なラブレターだ。
折りたたんで、私の気持ちと一緒に引き出しにしまい込む。
いつか気持ちを伝えたいけれど、彼に迷惑がかかってしまうかもしれない。
そんなことを思うと、言葉にできずに彼を見守ろうと思ってしまった。
――
「ねぇ、これなぁに?」
彼と一緒に住むことになって、引越しの手伝いをしてくれる彼が、どこか見覚えのある紙を渡してくれた。
なんだろうと、紙を開くと背中から彼もその紙を覗き込む。
最初の文章を読んで思い出した。
彼に片想いしていた時に、それだと気が付かずに書きつづった私の気持ちだ。
思わず隠そうとしたけれど、彼の動きの方が早くて、紙を上にあげて私が手を伸ばしても届かない。
「読んじゃダメ!」
彼はその言葉を聞かずに、じっと紙を、私の過去の想いを読むと緩んだ笑顔で私を見つめてくる。
内側から熱くなるし、恥ずかしくて彼から視線を逸らした。
すると彼に抱きしめられる。
「ねぇ、このラブレター。俺がもらってもいい?」
顔から火が吹き出るかと思った。
おわり
二七八、手紙の行方
彼女は甘やかな声で俺を呼んでくれる。
振り返るとその人が優しく微笑んだ。
透き通るような白い肌は、幼さの残る表情を大人びて見せるから、俺の胸が高鳴る。
もちろん、彼女の魅力はそれだけじゃないけれど。
外見が可愛いと思うより先に、彼女の優しさに惹かれた。
些細な思いやり。と言ってしまえば、全てがそれなんだ。
好きな色や、好きなものが一緒は偶然で。
俺が軽い気持ちであげたものを宝物にしてくれていて、それを当たり前に見せてくれた時は嬉しかった。
色々なものが積み重なっていた。
そして、彼女が俺を呼ぶ。
振り返ると、彼女の笑顔がキラキラと輝いていて、俺の心を捉えて離さない。
知ってはいけない感情を、見て見ぬふりも出来ないくらい見せつけてくる。
悔しいけれど。
俺はどうしようもないくらい、君に恋してる。
おわり
二七七、輝き
どうか時間よ、止まってくれ。
知りたくなかったんだ。
知ってはいけなかったんだ。
気がついちゃダメだったのに、気が付かないようにしていたのに……。
気がついてしまった。
悔しくて目頭が熱くなる。
外気温の冷たさを感じなくなるくらい、全身の内側から熱が巡った。
この感情の名前を知っても、気がついても、理解してもいけないのに。
そう決めていたのに。
瞳を閉じて目の前が真っ暗になる。
それでも、抜けるような空の下でキラキラ輝く髪と、胸を締め付けられそうなほどの暖かくなる彼女の笑顔が浮かんでくる。
俺は……
きみがすきだ。
この感情が〝恋〟だと気がついちゃダメなのに。
頼む。
気がつく前に戻って、そこで時間が止まってくれ。
おわり
二七六、時間よ止まれ
会いたい気持ちが溢れて仕方がない。
でも、俺の周りにも、彼女の周りにも人がいて、抜けられるような状況ではなかった。
何より俺と彼女の物理的距離がある。
それぞれのグループで笑って、はしゃいでいた。
彼女に視線を送ると、キラキラした瞳でみんなの会話に相づちを打ち、時々楽しそうな彼女の声が響く。
みんなは気にならないだろう声。
俺の耳にハッキリ聞こえる。
胸の高鳴りと共に、手を伸ばして引き寄せたくなる甘やかな彼女の声。
会いたい。
話したい。
そばにいたい。
違う。
君の声を聞いていると、どうしようもないほど胸を締め付けられる。
俺は、君にそばにいて欲しいんだ。
おわり
二七五、君の声がする