とある恋人たちの日常。

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2/8/2025, 12:58:38 PM

 
 ドコから来たのか。
 それは大好きな彼にも言えない。
 
 ココに来てからの私が、今の私のすべて。
 
 居場所がなくなった私が求めたのは、〇〇で。
 でもそれを彼には言えなくて。
 だって、きっと言っても信じてもらえない。
 困った顔で笑ってくれる。と、思う。
 
「遠く……に、来たよね。私」
 
 過去に戻りたいかと言われたら、それは絶対にない。
 
 今がいい。
 彼と想いが通じ合った今がいい。この〝今〟のこれからがいい。
 
 私は窓の外を見つめる。お日様が下へもぐろうとしている鮮やかな夕陽が見えた。
 
 もっと先に……あるのかもしれない〇〇。
 
 そこから逃げた私は、現在(今)、彼に出会って、これ以上にないほどの幸せを噛み締めている。
 
 今がいいの。
 
 夕陽は彼の優しい瞳を思い出してしまうからか、私の目から涙がこぼれ落ちた。
 
 今がいいの。
 この今で〇〇に帰りたいの。
 
 大好きな彼と一緒に。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六八、遠く……

2/7/2025, 12:31:09 PM

 
 俺には好きな人がいます。
 
 誰にでも笑顔だし、優しいし、思いやりのある女性だから、他の人からも好意を向けられている……気はする。
 
 請求書に添えてくれる他愛のない一言が嬉しくて、好きなものが同じものが多くて、無理に内側に入ろうとしてこなくて……。
 
 一緒に居て心地いいんだ。
 
 募っていく〝好き〟という気持ちをいつか伝えられたら良いと願ってしまう。
 
 誰も知らないけれど、誰にも言っていないけれど。
 多分、周りの人たちは少しづつ気がついている俺の秘密。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六七、誰も知らない秘密

2/6/2025, 2:19:18 PM

 
 しんと静まる夜。
 今日は恋人が夜勤で居間にひとりでソファに座っていた。
 
 テーブルの前にはココアが湯気を失いかけている。それだけ時間が経った証拠。
 
 眠ろうとは思ったんだ。
 でも、彼が居ない寂しさに負けてしまった。
 
 まあ、明日はお休みだから、頑張って眠ろうとも思わなかった。
 
 そう。
 明日は私も彼も休みだ。
 彼が帰ったあと、彼にぎゅーってしてもらって眠ってから、のんびり買い物デートしよう。
 
 あのお店見て、こっちのお店を見て……。
 そんな想像をしていたら、少し楽しくなってきた。
 
 コップを手に取りココアを口に含むと、すっかり冷たくなっていた。甘さが控えめになっていて、苦味が目を覚ます。
 
 あ。
 
 窓の外に視線を送ると、下の方からオレンジ色が差し込んできていた。
 
 夜が明ける。
 
 もう少ししたら、彼が帰ってくる。
 そうしたら大好きな彼の笑顔が見られるんだ。
 
 私の静かな夜明けが終わる。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六六、静かな夜明け

2/5/2025, 2:21:11 PM

 
 疲れた。
 肉体的にじゃなくて、精神的に。
 
 仕事もプライベートも楽しいんだ。
 人からもらう好意も嬉しい。
 
 楽しいけれど。
 嬉しいけれど。
 
 疲れる。
 
 そんな過去だった。
 
 
 
「大丈夫ですか?」
 
 ソファで目を覚ますと、恋人が俺を心配そうな顔で覗き込んでいた。俺の頬に手を伸ばして優しく添える。その体温の温かさに安心を覚えた。
 
 誰より愛しい彼女。
 
 俺は両手を伸ばして彼女を抱きしめる。
 
「どうしました?」
 
 彼女は俺を包み込むように抱き締め返してくれた。
 
 そう。
 あの時も、心が破裂しそうなくらい疲れていたんだ。
 
 そんな時、俺の心にその心で寄り添ってくれたのが彼女だ。
 心と心を合わせて、俺のストレスを解放してくれた人。
 
「もう少し、このままでいて」
 
 君がいれば大丈夫だから。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六五、heart to heart

2/4/2025, 2:01:59 PM

 
「なにこれ?」
 
 家に帰って居間に行くと、見慣れない白い箱があって、俺は思わず恋人に疑問をぶつけた。
 
「えっと……もらったんです」
「中身なに?」
 
 彼女は少しだけ戸惑いながら、俺を見上げてから箱を開ける。すると中には白と水色と青い薔薇が敷き詰められていた。
 
「え。これって、プリザーブドフラワー?」
「は、はい」
 
 ん?
 なんか様子おかしいぞ。
 不自然なまでに視線を逸らす彼女。どことなく頬と耳まで赤くなってる。
 
「なんかあった?」
「あ、あぁ……いや、えっと……その……」
 
 ついにもじもじし始めた。
 
「えっと……聞かない方がいい話?」
「あ、いや……」
 
 パッと顔を上げて慌てて否定する。少し考えたあとに照れた顔で見上げた。
 
 ダメでしょ、その顔は。
 俺は君に惚れているんですよ?
 
 今度は俺の方が視線を逸らして手で顔を隠した。
 
「え?」
「あ、いや。なんでもないです、教えてください」
 
 すると、彼女が左手を差し出す。そこには俺がプレゼントした指輪が光っていた。もちろん、薬指にはまっている。
 
「こ、これを見た社長たちが、勘違いしてお祝いって……」
「ふぇ!!?」
 
 それはつまり……結婚祝い……。
 
 それに気がついたあと、一気に顔が沸騰したように熱くなる。
 
 彼女の反応はこれか……。
 
 照れた顔した彼女はとても可愛くて。
 俺も照れはあったけれど、気持ちは固まっている。だから彼女に指輪を渡したんだ。
 
 俺は彼女の手を取ると、照れながらも不安な表情で俺を見つめる。
 
「安心していいよ。俺はそのつもりだから」
 
 いつか。
 プリザーブドフラワーと共に、君に永遠を違う花束を贈るね。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六四、永遠の花束

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