とある恋人たちの日常。

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11/21/2024, 12:46:31 PM

 
 彼女を気になるようになってから、つい視線で追ってしまう。
 他の人と楽しそうに話しているけれど、声をかけたい気持ちが溢れた。
 
 話している間に割り込むのも気が引けるし、迷惑になったら嫌だな。邪魔になるだろうし。
 でも、彼女と仕事以外で会えるわけじゃないし……どうしようかな。
 
 どうすればいいか悩んでいると、振り返った彼女と目が合った。俺を見つけて一瞬驚いていたけれど、すぐに柔らかく微笑み、軽く会釈してくれるから胸が高鳴る。だって、その笑顔が可愛いんだもん。
 
 俺は意を決して、彼女に向けて足を進める。
 
「こんにちは!」
 
 何事も無いように彼女に向かって挨拶をすると、俺に身体を向けて椅子から立ち上がってくれた。
 
「こんにちは、久しぶりですね!」
 
 眩い程の笑顔に、胸の鼓動が抑えられそうもない。
 
 俺は心の中で自嘲気味に笑ってしまう。
 だって、もう逃げられないんだよ。それくらい、俺は君に心を奪われているから。
 
 どうすればいいのかと、悩む必要なんてなかったね。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八九、どうすればいいの?

11/20/2024, 12:51:02 PM

 
『たくさんの想い出がつまった家だ……』
 
 昨日、家に帰ると恋人がカーテンを見ながら、そう呟いていた。
 
 その言葉は次の日になった今でも、俺の心に残っている。
 
 彼女との想い出は、何もかもが宝物だ。
 出会いも、不安になったことも、すれ違いも、それ以上に沢山ある笑いあったことも。全部が幸せな宝物だ。
 
 今日は休みの日で誰もいない。俺はあの時、彼女が触れていたカーテンに手を伸ばす。
 
〝これからも想い出をたくさん作っていこう〟
 
 そう、彼女に告げた。
 
 俺は嬉しくて、口を開けずに目を細めて笑う。
 俺と彼女は少し前から将来の話しをしていた。〝家族になりたい〟という願いを彼女も理解して受け入れてくれている。
 
 部屋全体を見回す。
 
 この家は2LDKで、ふたりで住むには十分だ。でも家族になったら、きっと手狭になることを理解している。だって、家族はふたりから増えていくものなのだ。
 
「宝物、きっと溢れるよ」
 
 
 
おわり
 
 
 
一八八、宝物

11/19/2024, 12:04:27 PM

 
 最近、季節の変わり目な上に寒暖差が激しくて、うまく眠れない。
 彼女を抱き締めていなかったら、もっと眠れないのだろうな。そう思うと、これでもマシな方なのだからタチ悪い。
 
 今晩も寝れるか不安を覚える中、寝室に行くといつもとは違う香りがする。
 
 なんだろう、木々の中にあまやかで、俺には落ち着く香りだった。
 
 部屋を見渡すとサイドテーブルに、ランプのようなものが置かれていた。これはアロマキャンドル?
 
 俺はそのキャンドルに近づいて、その匂いを嗅ぐと、これが香りの元だと分かる。
 
「いい香りだなー」
「良かった、苦手な香りじゃないですか?」
 
 後ろからトレーを持った恋人が入ってきた。俺の言葉に安心したようで、ふわりと柔らかく微笑んでくれた。
 
「はい、どうぞ」
 
 渡されたマグカップの中は透明で……これはお湯かな?
 
 彼女にはそれが聞こえたようで、頷きながら微笑んだ。
 
「白湯です。眠る前にゆっくり飲んでくださいね」
 
「……えっと……俺が眠れてないの、気がついてた?」
「そりゃ隣で寝ているんですから」
 
 当然です。
 そう言っているように見えた。
 
「このキャンドルも?」
「はい! デパート行って買ってきちゃいました!」
「ごめんね。高そう……」
「値段なんて良いんです。ちゃんと眠るのが一番です」
 
 彼女は俺の手に自分の手を重ねる。細くて、柔らかい手が心地いい。
 
「でも俺、君を抱っこしていれば割と安心するんだけど……」
「それじゃ足りたい状態ですよ。今度、マットレスや枕も探してみましょう」
「え、高くない?」
「それでちゃんと眠って、お仕事が安全にできるなら安いものですよ」
 
 穏やかな口調だけれど、真剣な思いが伝わる声だった。
 
「人の命に関わる仕事をしているんですから、ね?」
 
 俺の手をさすってくれながら、有無を言わせない言葉。
 
「そして、ちゃんと私のところに帰ってきてください」
 
 ああ、本当に彼女は俺のことをよく分かってる。そう言われてしまうと、俺は大人しく言うことを聞くしかないんだ。
 
 俺は白湯を時間をかけて飲みきると、彼女の肩に頭を軽くのせて、ぼんやりとキャンドルの日を見つめた。ゆらゆらと揺らめく小さな炎を見ていると、理由はないけれど落ち着く。
 
「眠くなったら、そのまま寝てください」
「ん……」
 
 頭にモヤがかかり、視界がぼんやりとする。この香りは彼女の思いやり。白湯で温められた身体と穏やかに揺れる炎は、俺を心地よい眠りへ誘ってくれた。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八七、キャンドル

11/18/2024, 1:05:00 PM

 
 ぼんやりと彼を待ちながら、部屋を見回した。
 
 一緒に住んで……結構経つな……。
 
 目の前に置いてあるマグカップもお揃いで買った。
 
 窓を見ると、一緒に選んで買ったカーテンが目に入る。
 
 ふたりともカーテンなんて何でもいいと思っていたから、高さを知らなくて慌てて家に帰って色々長さを測ったっけ。
 
 自然と笑みが浮かぶ。
 この家にあるものは、ほとんどふたりで選んだから、何もかもが彼との想い出だ。
 
「たくさんの想い出がつまった家だ……」
 
 愛おしい彼との家。
 
「これからも想い出が増える家だよ」
 
 ぼんやりと眺めていたから彼が帰ってきたのに気が付かなかった。
 
「あ、おかえりなさい」
 
 彼へ正面から抱き締めると、彼もいつものように抱きしめ返してくれた。
 
「うん、ただいま」
 
 いつもなら、すぐに離してくれるのにより強く抱き締められる。暖かくて幸せでいっぱいになった。さっきまで、彼との想い出を反芻していたから、私も離れがたい。
 
「これからも想い出、たくさん作っていこうね」
「はい!」
 
 
 
おわり
 
 
 
一八六、たくさんの想い出

11/17/2024, 11:34:34 AM

 
 お風呂に上がって、ホカホカした身体をソファに座って涼んでいた。
 彼女はテレビを付ける訳じゃなく鈴虫の鳴く秋をイメージした音を彼女のスマホから再生する。
 ただ静まり返っているわけでもなく、季節の音に合わせたBGMは心地よくてソファに身体を預けて瞳を閉じる。
 
「ああ、いいねぇ……」
「いいですよね。会社でこんなBGMがいいよって話になって探してみました」
 
 彼女は髪の毛を拭きながら水の入ったコップを二つ置いた。
 
「ありがとう」
「いいえ。お風呂上がりですから、水分取ってくださいね」
「うん」
 
 俺は近くに置いてくれたコップに手を取って、飲むと冷たい水が身体にしみ渡る。音楽も心地よいし、このまま眠りに落ちそうだった。
 
「寝ちゃダメですよ」
「バレた?」
「眠そうな顔してました」
 
 さすがにバレておりますね。
 彼女は立ち上がって髪の毛を乾かしに洗面所へ戻ると、俺は一人取り残された。
 
 と言うか、俺も髪の毛乾かさなきゃな。
 
 そんなことを思いながら、彼女がドライヤーを使い終わるのを待つ。
 
 そういえば、BGMって季節に合わせて色々あるよなーと思ってスマホを取りだした。
 動画サイトで検索してみる。秋の虫の声の他に、もう暖炉の焚き火の音があって驚いた。
 
「うわ、早いなー」
 
 そんなことを思いつつも、気になるのでそれをタップして、彼女のスマホの音より少しだけ小さくして隣に置いた。
 
 秋の鈴虫の声と、暖炉の火を弾く音が合わさってまた心地いい。
 
「わ、焚き火の音が追加されてる!」
 
 ぼんやり聞いていると、髪の毛を乾かして、ふわふわになった彼女が戻って来ていた。
 
「もう、髪の毛乾かさないままウトウトしないでください」
「心地よくって……」
「それは分かりますけど……とりあえず、髪の毛、乾かして来てください」
「はーい」
 
 俺はソファに根を張りかけた腰をあげて、髪の毛を乾かしに洗面台に向かった。
 
 彼女を横目で見ると、俺のと自分のスマホを横並びにさせて、ソファに身を委ねている。
 
 やっぱり心地いいんだろうな。
 
 うーん、暖炉か……。
 
 虫の声はここでも聞けるけれど、暖炉の焚き火の音はそういう訳にはいかない。
 土地土地のルールがあって、当然俺たちの住むここでも暖炉は禁止されている。
 
 俺はドライヤーで髪の毛を乾かしながら、ぼんやりと考える。
 
 冬になったら、暖炉のある別荘に遊びに行ってもいいかな……。
 あ、スノボやりに行ってもいいかも。
 
 そう思うと、早く相談したくて、根元にドライヤーの風を当てて、急いで終わらせて彼女が微睡んでいる居間に戻った。
 
「ねえねえ、冬になったらこんなふうに暖炉の音、聞きに行かない? スノボやりに行く時にそういう別荘探してもいいし!!」
「ふえ!?」
 
 突然、居間に入ってきた俺の声に驚きながらも、ちゃんと考えてくれる。そうして楽しそうと思ってくれたようで、ぱあっと輝く笑顔を向けてくれた。
 
「いいですね! 行きたいです!!」
 
 実際、スノボじゃなくても、彼女と暖炉の火をぼんやり眺めるとか、のんびり話をするとか、そんな時間だっていい。
 
 もう少し先になるけれど、冬の到来が楽しみになった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八五、冬になったら

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