とある恋人たちの日常。

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9/27/2024, 1:17:00 PM

 
 ほんの少し前まで綺麗な青空を見ていたのだが、灰色の雲が覆い始める。
 嫌な予感を覚えた青年は、恋人の手を取りカフェへ促した。窓際の席に座った頃、更に空の色合いは暗さを増していた。
 
 ぽつ、ぽつぽつ……。
 
「わあ……雨降ってきましたね……」
 
 彼女はスマホを取り出して、天気予報を覗き込む。
 
「一時間くらいて止みそうです」
 
 天気予報アプリの画面を青年に見せつけながら、屈託のない笑顔を向けてくれた。
 
「出かけられなくなっちゃったね」
 
 青年は視線を外に向けながら声のトーンを小さくして囁く。それを見た彼女は青年の手に自分の手を重ねた。
 
「通り雨ですから、止んだら続きのデートをしましょ。それまではカフェデートです!」
 
 優しく微笑む彼女に、心が暖かくなるのを感じながら、手のひらをひっくり返して彼女の指と指の間に自分のそれを通した。
 
「そうだね。時間はあるんだからゆっくりしていこう」
 
 彼女と一緒にいる時間、それは変わらないのだから。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三四、通り雨

9/26/2024, 11:13:10 AM

 
 普段から隣に座る恋人。今日は俺の肩に頭を乗せて、腕を絡めながらテレビを見ている。
 
 なんだろう。
 この感じ、久しぶりだなー……。
 
 彼女の温もりが心地好くて、俺も彼女の頭に寄りかかる。
 
 気持ちいいなー。
 
 あ、そっか。
 滲むような汗が吹き出るんじゃない。この暖かい体温が安心感を覚え、彼女の身体を抱き寄せていることに気がついた。
 
「どうしたんですか?」
 
 俺が身体で反応してしまったようで、彼女が不思議そうな声をあげてくる。俺は彼女の頭を優しく撫でた。
 
「秋めいてきたなって思って」
「そうですね!!」
 
 パッと微笑んだ彼女は、正面から俺を抱き締めてた。
 
「ぎゅーってしても汗いっぱいになりませんね!」
 
 
 
おわり
 
 
 
一三三、秋🍁

9/25/2024, 11:38:05 AM

 居間でぼんやりと飲みものを飲んでいると、庭から楽しそうな声が響き渡った。
 声に導かれて視線を送ると、窓から見えたのは恋人と幼子だった。
 
 幼子は知り合いの子で、どうしても手が離せない知り合い夫婦の代わりに俺たちが面倒を見ていた。
 
 幼子が、両手を広げた恋人に向けてよちよち歩いては彼女の胸に飛び込んでいる。
 
 彼女の口元が、「よくできました!」と抱きしめている姿がとても微笑ましくて。
 
 いいな、あの姿。
 
 まだ恋人……けれど、いつか。
 この景色を家族として見たいな。なんて思ってしまった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三二、窓から見える景色

9/24/2024, 11:30:51 AM


 深夜、喉が渇いて目を覚ます。
 近くに置いてあったペットボトルに手を伸ばして、水を口に含んだ。
 
 隣で眠っていた彼女が起きないのに安心しながら、俺はもう一度彼女を後ろから抱きしめた。
 
「大好きだよ」
 
 すいよすいよと眠っている恋人に、小さく囁いた。
 
 形の無い気持ちだけれど、俺の中には明確にあった。
 お互いを想い合う、なんて奇跡がここで起こっているんだ。
 
 縋るように彼女を抱きしめると、彼女の独特の甘い香りと、一緒に使っているシャンプーのにおいが鼻をくすぐる。それが俺に安心感を与えてくれる。
 少しずつ全身の力が抜けていくのと同じく、俺の意識も少しずつ遠くなっていく。
 
 ああ、君を好きになって良かった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三一、形の無いもの

9/23/2024, 12:18:07 PM

「わーい!」
 
 デートの帰りに見かけた公園。最近は見かけないパイプを骨組みにしてできた遊具に、彼女は登り始める。
 
「危ないよー」
「大丈夫ですー!!」
 
 俺としてはスカートも少し気になるところなのだけど。彼女は俺の気持ちを知らずにスイスイと登る。ある程度のところで、俺は一歩後ろに戻り進めなくなった。
 
「どうしましたかー?」
 
 理由を伝えるかどうか悩むが、俺は口を開いた。
 
「下着が見えそうー」
「えっち!!」
「理不尽!」
 
 俺はそれを心配していたのに、真っ先に怒られてしまった。気にせず登ったのは彼女なのに。
 
「危ないから降りて降りて。落ちても応急処置しか出来ないからねー」
「はぁーい」
 
 俺の職業は救急隊員。でも今の俺は医者じゃない。ただの彼女の恋人なのだ。
 
 彼女は素直にジャングルジムから降り、最後に体操の選手のようなキメ技っぽく飛び降りるからパチパチと拍手を送る。
 
 彼女はピースを俺に向けて満足気に笑った。
 
「俺も登ってみようかな」
「普段と違う景色が見えますよ!」
 
 得意気に微笑む彼女だが、俺は彼女の足元を指さした。
 
「登っちゃだめだからね」
「ぶー!」
 
 俺は視線を上に向けるけれど、彼女の強い視線もしっかり受ける。
 
「やっぱりやめよう」
「どうしてですか?」
「今度はここに登ることも想定して来ようよ」
 
 つまりは彼女がズボンを履いてきた時にと伝える。
 
「ふたりで登りたいな」
 
 とは言え、最近ジャングルジムは遊具として危険だと言うことで、どんどん姿を消している。だから早めに来られるように予定を立てようと彼女に伝えると、大きく頷いてくれた。
 
 思い出を作るならふたりが良い。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三〇、ジャングルジム

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