「わーい!」
デートの帰りに見かけた公園。最近は見かけないパイプを骨組みにしてできた遊具に、彼女は登り始める。
「危ないよー」
「大丈夫ですー!!」
俺としてはスカートも少し気になるところなのだけど。彼女は俺の気持ちを知らずにスイスイと登る。ある程度のところで、俺は一歩後ろに戻り進めなくなった。
「どうしましたかー?」
理由を伝えるかどうか悩むが、俺は口を開いた。
「下着が見えそうー」
「えっち!!」
「理不尽!」
俺はそれを心配していたのに、真っ先に怒られてしまった。気にせず登ったのは彼女なのに。
「危ないから降りて降りて。落ちても応急処置しか出来ないからねー」
「はぁーい」
俺の職業は救急隊員。でも今の俺は医者じゃない。ただの彼女の恋人なのだ。
彼女は素直にジャングルジムから降り、最後に体操の選手のようなキメ技っぽく飛び降りるからパチパチと拍手を送る。
彼女はピースを俺に向けて満足気に笑った。
「俺も登ってみようかな」
「普段と違う景色が見えますよ!」
得意気に微笑む彼女だが、俺は彼女の足元を指さした。
「登っちゃだめだからね」
「ぶー!」
俺は視線を上に向けるけれど、彼女の強い視線もしっかり受ける。
「やっぱりやめよう」
「どうしてですか?」
「今度はここに登ることも想定して来ようよ」
つまりは彼女がズボンを履いてきた時にと伝える。
「ふたりで登りたいな」
とは言え、最近ジャングルジムは遊具として危険だと言うことで、どんどん姿を消している。だから早めに来られるように予定を立てようと彼女に伝えると、大きく頷いてくれた。
思い出を作るならふたりが良い。
おわり
一三〇、ジャングルジム
9/23/2024, 12:18:07 PM