とある恋人たちの日常。

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7/14/2024, 11:43:52 AM

「どこ行こっか」
「なにしましょうかねぇ……」
 
 今日のデートはどうするか。車の中で相談しあっていた。すると、青年はパッと明るい顔をして、車を走らせる。
 
「どこへ行くか、決まったんですか?」
「うん、任せて!」
 
 きっと彼女なら喜んでくれる。そう確信している青年の笑顔と、喜ばせてくれる気だと理解している恋人の彼女。
 
「今日はね、雨が降っているから、室内で楽しめるところ!」
「え!? どこですか!?」
「へへーん。楽しみにしてね!」
 
 青年の弾む声に、彼女も同じように期待を膨らませている。
 
「……ありがとうございます」
「ん?」
「いつも、色々連れて行ってくれて」
 
 わくわくした声から、少しだけトーンを落として彼女が言葉を紡ぎ始める。
 
「あ、いいの、いいの。一緒に色々行くのが、俺の楽しみなんだから!」
 
 青年は職場に籠りっきりの彼女を連れ出すのが楽しみなのだ。
 それでも、遠慮してしまう彼女だと、青年は大いに理解している。青年は車を端に寄せて駐車して、彼女に視線を向ける。
 
「だからね、俺と一緒に遊びに行こう」
 
 彼女の手に青年は手を重ねると、彼女も握り返してくれた。
 
「はい、沢山連れて行ってください。私も何か知ったら連れていきます」
「うん、楽しみにしているね!」
 
 青年はどうしようかなと、少しだけ迷った。
 それに気がついた彼女は、何に迷っているのかと首を傾げる。もう、その姿が可愛らしいのに。
 
 ほんの少しだけ視線を逸らしたかと思うと、青年は軽く彼女の唇に自分のそれを重ねた。
 
「!?」
「じゃ、じゃあ、行こうか!」
 
 再び車を走らせる青年の顔は、とても熱かった。
 
 
 
おわり
 
 
 
手を取り合って

7/13/2024, 1:11:02 PM

 出張修理を終えて、一人でバイクを走らせていると、つい考えてしまった。

 彼は人の命を助ける救急隊のお仕事をしている。
 とても立派だし、出会いも怪我を治して貰ったところからだ。
 
 色々な人からモテるのは知っているの。
 
 そんな彼を支えたいって思っているけれど、彼を支えることは出来ているのかな。
 彼の車や、バイクを直すことは出来るけれど、彼の心を癒せているか、時々不安になる。
 
 彼の仕事のパートナーや、先輩はみんな女性だし、私は役に立てているのかな。
 
 
 遠くから彼が呼んでる声がした。
 気のせいかな。
 病院の近くじゃないし、家の近くじゃない。
 
 バイクを停めて、周りを見回した。
 
 すると、音を鳴らさずに走ってくる、彼の仕事の車が見えた。
 
 え?
 本当に呼んでた?
 
 彼の車が近くで停まると、周りを見回してから降りてきた。
 
「おつかれ! 出張修理?」
「はい、今帰りなんです」
「あ、そうなんだね。俺も救助終わった帰りなんだよ。良かった〜」
「良かった?」
 
 思わず首を傾げると、少し慌てて照れたように笑う。
 
「行きだったら、互いに迷惑かけちゃうじゃない」
「行きは、救助優先してください」
「もちろん!」
 
 苦笑いしつつ元気よく返事をする彼。
 そして、私のお客さんにも気を使ってくれる。
 本当に優しい人だ。
 
 あれ、もしかして……。
 
「あ、本当に呼んでました?」
「呼んでた、呼んでた。見かけたら、声掛けたくなっちゃった」
「え? 結構遠くから聞こえていた気が……」
「そりゃ、遠くにいたって見間違えないもん」
 
 何か用事があったのかな?
 そう思って、そのまま聞いてみる。
 すると、ほんのり頬を赤らめて、眩しいほど素敵な笑顔を向けてくれた。
 
「会えそうなら会いたかったの。疲れたから癒されに来た!」
 
 迷いのない満面の笑みを見ていると、胸が熱くなる。
 この笑みは、私のものなんだ。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:優越感、劣等感

7/12/2024, 11:57:34 AM

 ふと気がついた。
 彼女といるのが心地いいことに。
 
 なんだろう。
 疲れないから?
 いや、変な緊張すること多いし、疲れないってことは無いぞ。
 
 考えることが多い?
 ああ、確かに彼女といる時は考えることは多いかも。
 ちゃんとエスコートしたいって思うし、させてくれる。
 
 その割には無駄に力を入れなくて済む。
 
 他の異性は、やりたいことを押し付けられることが多い。
 それは考えなくて済むし、振り回されるのも嫌いじゃないけれど、それでいいのかなと思う時がある。
 
 それで気がついたんだ。
 彼女は、これまでずっと俺に対して、気を使って、俺を大切にしてくれているんだ。
 幼さや、おっちょこちょいなところがあって、こっちが心配しちゃうくらいで。
 そんなふうに見えないのに、とても優しい彼女。
 
 凄く、凄く胸が熱くなった。
 
 ヤバいな、耳が熱い。
 絶対に顔も赤くなっている。
 
 でも。
 凄く会いたい。
 
 これは、俺が彼女への気持ちを、明確に自覚した瞬間だった。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:これまでずっと

7/11/2024, 10:50:07 AM

 ぽこん。
 
 服の中から小さな音と、震えが感じられた。ちょうど作業をしていなかった彼女はポケットからスマホを取り出した。案の定、送信先は愛しい青年だった。
 
 今日はこの後、青年とお出かけをする予定なので、その連絡だろうかとスマホを覗く。
 
『見て見て、綺麗な空だよ!』
 
 送られたメッセージをスクロールすると、真っ青な空の真ん中に、白く大きな三角形のような形をした雲が見えた。
 
「うわ、綺麗な空……」
 
 彼女と恋人の青年は、こんな見事な水色の空の色が大好きなのだ。さらに真ん中にある積乱雲は、黒い色がないのもまた見事だった。
 
 返信を打つ時、頬が緩んでしまう。
 
『すごいきれいですね!』
 
 そう返事を送る。
 
 青年は救急隊と言う仕事柄、ヘリコプターに乗ることが多いので、自分が見たものに感動を覚えるとこうやって写真を送ってくれるのだ。
 
 しかも、こんな素敵な空。
 ふたりが好きな色の空にうっとりとしてしまうが、ハッとする。
 
 これは積乱雲。つまりはこの後雨が降るということだ。
 
『雨が降る前に、迎えに来てくださいね』
 
 それを送った後、返事は来なかった。
 
 これは……慌てさせてしまったかもしれない。
 
「社長! 私、そろそろ上がりますね!」
「わかったー、おつかれー!!」
 
 奥のスタッフルームに入って、よく手を洗い、仕事着から私服に着替える。本当はシャワーを浴びたいけれど、ここでは難しい。
 
 スタッフルームの扉を開けると、慌てて入ってくる彼の車が見えた。
 
「雨が降る前に迎えに来たよー!!!」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:一件のLINE

7/10/2024, 11:46:49 AM

 無機質な音が流れる。その音が眠りの海から彼女の意識を呼び覚ます。
 
 彼女は、ゆっくりとまぶたを開けた。
 
 薄暗い部屋。
 カーテンの隙間からこぼれる光を頼りに、ベッドから立ち上がって手を伸ばす。
 
 シャッ。
 
 眩しい光が差し込むと、ゆっくりと、そして確かに身体が目を覚ましていった。
 
 振り返ると広いベッドが見え、寂しさを覚えて胸が痛む。
 そして、深いため息をついた。
 
 ひとまず、朝ごはんを用意して仕事に向かった。
 一日ずっとモヤモヤしてしまう。
 職場で笑っているけれど、心の奥にある虚しさは埋めることが出来ない。
 
 仕事が終わり、家に帰る。
 今日は何もしたくなくて、さっさと眠ってしまった。
 
 
 
 コーヒーと、パンを焼くいい香りがする。
 チーンと言うトースターの音、パタパタと廊下の歩くスリッパの音。
 
 そして、視界が白くなる。
 
「はーい、起きて!!」
 
 その声でハッキリと目を覚まして、身体を起こした。
 すると正面から強く抱きしめられる。
 
「え!?」
「おはよう」
 
 当たり前の温もりが、その重さが身体にかかる。
 愛しい青年の体温に驚きつつ、しっかり抱きしめ返した。
 
「おはよう……ございます。それと、おかえりなさい」
「うん、ただいま」
 
 青年は救急隊の仕事でしばらく家に帰れなかった。
 状況的に、いつ帰ってくるかは分からない。
 仕事に集中して欲しいし、邪魔になるのは嫌だったので、こまめに連絡は入れなかった。
 
 だから、今、青年の温もりに安堵して目頭が熱くなる。
 彼女は、こんな表情を見られると、心配させちゃうと思って、抱きしめる腕に力が入った。
 
「連絡くれないんだもん、寂しいよ」
「邪魔になったら迷惑かなって……」
 
 青年は身体を離そうとするが、彼女は離さない。その様子に気がついた青年は、改めて彼女を強く抱きしめる。
 
「いつも俺の事を想ってくれて、ありがとう」
 
 ゆっくりと身体を離し、涙目になっている顔を見られてしまった。
 ふふっと青年が笑うと、彼女の額に柔らかい温もりが当たる。
 
「今日はさすがに休みだから、家にいるよ」
「じゃ、休んでください」
「朝ごはん食べさせて、仕事行くのを見届けたら寝るね」
 
 そう笑いながら、青年はベッドから立ち上がり、彼女へ手を差し伸べた。
 
「さ、ご飯作ったんだ。食べよう! 俺ももう腹減ったよー!」
「食べてないんですか?」
 
 朝日と同じくらい、眩い笑顔を彼女に向ける。
 
「一緒に食べたかったんだ!」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:目が覚めると

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