とある恋人たちの日常。

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 ぽこん。
 
 服の中から小さな音と、震えが感じられた。ちょうど作業をしていなかった彼女はポケットからスマホを取り出した。案の定、送信先は愛しい青年だった。
 
 今日はこの後、青年とお出かけをする予定なので、その連絡だろうかとスマホを覗く。
 
『見て見て、綺麗な空だよ!』
 
 送られたメッセージをスクロールすると、真っ青な空の真ん中に、白く大きな三角形のような形をした雲が見えた。
 
「うわ、綺麗な空……」
 
 彼女と恋人の青年は、こんな見事な水色の空の色が大好きなのだ。さらに真ん中にある積乱雲は、黒い色がないのもまた見事だった。
 
 返信を打つ時、頬が緩んでしまう。
 
『すごいきれいですね!』
 
 そう返事を送る。
 
 青年は救急隊と言う仕事柄、ヘリコプターに乗ることが多いので、自分が見たものに感動を覚えるとこうやって写真を送ってくれるのだ。
 
 しかも、こんな素敵な空。
 ふたりが好きな色の空にうっとりとしてしまうが、ハッとする。
 
 これは積乱雲。つまりはこの後雨が降るということだ。
 
『雨が降る前に、迎えに来てくださいね』
 
 それを送った後、返事は来なかった。
 
 これは……慌てさせてしまったかもしれない。
 
「社長! 私、そろそろ上がりますね!」
「わかったー、おつかれー!!」
 
 奥のスタッフルームに入って、よく手を洗い、仕事着から私服に着替える。本当はシャワーを浴びたいけれど、ここでは難しい。
 
 スタッフルームの扉を開けると、慌てて入ってくる彼の車が見えた。
 
「雨が降る前に迎えに来たよー!!!」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:一件のLINE

7/11/2024, 10:50:07 AM